KDDI総合研究所(KDDI RI)と京都大学(京大)は9月22日、人工的な光ナノ構造を2次元状に配置した半導体レーザーの「フォトニック結晶レーザー」を用いた高出力な「自由空間光通信」の実証に成功したことを発表した。

同成果は、KDDI RIと、京大大学院 工学研究科の野田進教授、同・森田遼平特定研究員、同・井上卓也助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、現地時間9月18日から22日にかけてスイスで開催された光通信分野の世界最大規模の国際会議「The European Conference on Optical Communication(ECOC 2022)」にて発表されたという。

大気圏内や宇宙空間などの自由空間を伝搬する光を利用して、通信のためのデータを無線送信する光通信技術は自由空間光通信と呼ばれている。電波と同様に、光通信においてもより遠方に送るためには高いパワーが必要で、そのためにはファイバーアンプなどの大型装置による増幅が必要とされている。

また遠方への光通信では、高いパワーに加えて、ビームの拡がり角を小さくすることも重要となる。ただし、ファイバーアンプなどを経て出射された通常のレーザー光は、小さな面積の領域から発射されるが、発光領域の大きさとビームの拡がり角には反比例の関係があるため、そのまま空間伝搬させるとビームが極めて大きく(10度以上)に拡がっていってしまうという特性がある。ビームの拡がりを抑えるためには、複雑な外部光学系が必要で、それを組み込めば装置自体の複雑化と大型化を招いてしまう。

そこで研究チームは、高いパワーと狭い拡がり角を併せ持ち、レンズフリーで活用可能なフォトニック結晶レーザーに着目し、自由空間光通信への利用に向けた研究開発を進めてきたという。