クラウドを移行する際のメリットの一つに、コスト削減があるが、使い方によっては、想定よりもコストがかさんでしまうことがある。また、昨今の円安の影響で、ドル建てでクラウドの利用料金を支払っている企業は、想定の金額を上回っているかもしれない。

AWSジャパンがこのほど、「今だからこそ考えるシリーズ:最適なクラウド活用(変動する為替環境への対策)」というテーマで記者説明会を開催した。 本稿では、説明会の内容をもとに、AWSのコストを削減する方法を紹介しよう。

一気通貫のフレームワークでコスト最適化を支援

初めに、AWSが提供しているコスト最適化を支援するサービスを整理しておこう。今年3月、AWSに移行するプロジェクをト支援するサービスの最新版「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ 2.0」が発表された。

同サービスは、AWS移行プロジェクトを「評価」「準備」「移行」の3つのフェーズに分けて支援する。「移行」のフェーズで、「コスト最適化支援」サービスを提供する。

  • 「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ 2.0」でコスト最適化を支援

事業開発統括本部 統括本部長 兼サステナビリティ推進室 室長の佐藤有紀子氏は、「お客様において、コストに関する困りごとが高まっている。こうした状況に対し、われわれは一気通貫のフレームワークを提供することで、コストを最適化する」と説明した。

現在、「円安の影響で想定よりコスト効果を実感できない」「持続的な最適化のために何を整備すべきがわからない」「コスト最適化を限られたチームでしか実践できていない」といった、コストにまつわる課題が生じているという。

AWSはコストにまつわる課題解消に向けて、移行後のAWS コスト最適化を支援する「Cloud Financial Management」、組織横断的なワークショップを支援する「Financial Hackathonワークショップ」、持続的な最適化のためのケイパビリティ可視化支援「Capability Assessment」を提供している。

  • AWSのコストを最適化するフレームワーク

2020年から2022年8月まで、日本におけるCloud Financial Managementの実績は200件を超えるそうだが、平均したコスト削減効果は15%~20%に達しているという。

コスト最適化の状況をチェックできる「AWS Trusted Advisor」

続いて、パブリックセクター技術統括本部 統括本部長 / プリンシパルソリューションアーキテクトの瀧澤与一氏が、AWSの利用コストを削減する方法を紹介した。

瀧澤氏は、AWSを利用する価値について、「コスト削減 (TCO)」「スタッフの生産性」「オペレーショナルレジリエンス」「ビジネスの俊敏性」という4つの側面から捉えられると述べた。この4つの側面をまとめたフレームワークが「AWS Cloud Value Framework」だ。

  • AWSへの移行とAWS上でビジネスを構築することのビジネスバリューを理解するためのフレームワーク「AWS Cloud Value Framework」

瀧澤氏は、自社のAWSのコスト最適化の状況をチェックするツールとして、「AWS Trusted Advisor」を紹介した。同ツールは、14個の項目に基づいて、利用率の低いリソースを明確にしたり、Reservedや Saving Planのコストが最適かどうかを示したりする。

  • AWSのコスト最適化の状況をチェックするツール「AWS Trusted Advisor」

リザーブドインスタンス、Savings Plansを活用する

瀧澤氏は、AWSのコストを削減する方法として、リザーブドインスタンスとSavings Plansの選択を紹介した。

リザーブドインスタンスについては、契約期間中に権利の条件を柔軟に変更する可能性があるかどうかを条件に、スタンダード(変更不可)とコンバーチブル(変更可)を選択すればよいという。

スタンダードは権利の変更は不可だが、割引率が最も高い。一方、コンバーチブルは権利変更が可能だが、スタンダードよりも割引率は低い。

また、Savings Plansとは、1年または3年の期間で特定の使用量 (USD/時間で測定) を契約する代わりに、オンデマンド料金と比較して低料金を実現する柔軟な料金モデル。Savings Plansには、「Compute Savings Plans」「EC2 Instance Savings Plans」「Amazon SageMaker Savings Plans」がある。

Compute Savings Plansは、Amazon EC2、AWS Lambda、AWS Fargateの使用量に適用される。EC2 Instance Savings Plansは EC2の使用量に、また、Amazon SageMaker Savings Plans は Amazon SageMaker の使用量に適用される。

  • Savings Plansとリザーブドインスタンスの比較

加えて、オブジェクトストレージ「S3」は、S3は利用した容量に対して課金されるため、用途に応じたストレージタイプを変更することでコストを削減できる。

「S3」のコスト最適化を支援するサービスとしては、30日間のアクセス状況を見て、S3のデータを最適なTierに移動してくれるサービス「S3 Intelligent Tiering」がある。

  • 「S3 Intelligent Tiering」の仕組み

瀧澤氏は、AWSのコストを削減したいユーザーに対して、「まずは、AWS Trusted Advisorを試していただきたい」と言っていた。家計を見直す場合も、ファイナンシャルプランナーに収支を見直してもらうことで、節約できる場所を探し当てる。クラウドサービスのコストも同様だろう。限りあるIT予算を効果的に使うためにも、クラウドサービスのコストが最適化されているかどうか、確認して損はないだろう。