新型コロナウイルスの影響により大きく変わった働き方。新しい働き方として、「テレワークの普及」は大きな出来事だったのではないだろうか?
Stockが6月7日に発表した、テレワークの経験があるビジネスパーソン500人を対象に実施した「テレワークのメリットに関する意識調査」の結果では、67%の人が「テレワークに満足している」と回答しており、その理由として「通勤やメイクの時間の削減」「プライベートの時間の確保」「飲み会の減少」といったものが挙がっている。
こうしてみるとテレワークは良い面ばかりのように感じられるが、その一方で、テレワークは社内の関係性が希薄になってしまうという危険性をはらんでいるという見方も近年増えている。
そんな社内の関係性が希薄になってしまうという課題を解決し、チームの在り方を再構築するため新しくアウトドア研修として提供が始まったのが「RE」だ。
本稿では、さまざまな企業の人事担当者やHR担当者が参加した「RE」の体験会の一部始終をお届けしよう。
自然の力で人と組織を同時にアップデートする
アウトドア研修「RE」は、スノーピークビジネスソリューションズとチェンジが共同開発し、9月から両社で提供を開始した企業向け人材育成研修プログラム。
仕事やチームとの関係性を「見つめ直す(re-consider)・考え直す(re-think)・つなぎ直す(re-connect)」という3つの観点から学びを得る研修になっているため、「RE」と名付けられた同研修。「バイアスからの脱却」「主体性の向上」「創造性の向上」「関係性の構築」といった4つのテーマをアウトドアでの体験を通じて学ぶことができる。
今回の体験会に集まったのは、さまざまな企業の人事やHR担当者で、いずれも社内での関係性の希薄さに悩みを持つ人たちだ。
参加者たちは、まずアウトドア研修の舞台になる京急観音崎ホテル内に集まり、チームごとに「RE」の研修内容やコンセプトのレクチャーを受け、自己紹介を行った。本来であれば、このチームは社内の部署や新人研修のグループなど顔見知りで組まれるようだが、今回の体験会ではさまざまな企業の参加者が混ぜ合わさり、初対面の人たちとチームを構成していた。
自己紹介が終わると、いよいよ研修の本番が始まる。
青い空と広い海が広がる中で研修がスタート
いざ室内を飛び出して屋外へ!
青い空と広い海、そして芝生の緑が生い茂っている中に研修の舞台はあった。キャンプにちなむものから名前が付けられたテントには、机と椅子が並べられている。そのテントに先ほどのチームごとに着席し、研修がスタートした。
研修に入る前に、普段PCと向き合ってばかりいることで狭まってしまっている感覚を広げるために「五感を広げる」導入が行われた。
初めに思い切り息を吸って、どんな香りがするかを確認し、「嗅覚」を広げる。普段は感じられない磯の香りや、芝生の香りを、立ったり座ったりしながら確かめる。立っている時には感じられなかった香りをしゃがんでいる時に感じられたり、座った方が芝生の香りが強く感じられたり、と自分の位置で感じられる嗅覚に違いがあることを体験する。
続いては、両手を広げ「視野」を広げる。横を向かずにどこまで手を広げられるかを実際に体験し、自分の手ですら背中側に回ると見ることができなくなることを再確認する。
このようにさまざまな五感を広げる導入を最初に行うことで、「普段感じていることは立場が変われば違うように見えるかもしれない」という感覚を共有して先入観をなくし、考え方を広く持てるように誘ってくれているのではないかと感じた。
チームメイトの新たな側面を知る「虫・鳥・魚」
研修の1つ目は「虫・鳥・魚」とタイトルのついた自己開示の研修だ。 このタイトルは、「鳥の目」「虫の目」「魚の目」という言葉から来ており、フォーカスしているところから視点を変え、幅広く物事を見てみるという内容の研修になっている。
この研修の流れはこうだ。まず、参加者はチームのメンバーから「自分の普段の印象」を聞く。そして、メンバーから得た印象の中には挙がらなかった「異なる自分の一面」を考え、それを表す写真を撮影し、メンバーにプレゼンテーションを行う。
ファーストステップの段階ではクールなイメージが多かった参加者が、実は熱い闘志を胸の中に秘めていたり、また、会話を引っ張るムードメーカーなイメージが強かった参加者が、実は1人でいることも好きだったりと、さまざまな異なるイメージの開示が行われた。これにより、普段見ている面とは違った側面に驚くと同時に新たな一面を知ることができ、より仲が深まっているように感じられた。
火を囲んで語り合う「TAKIBI」
続いて行われたプログラムは、焚火を囲んで会話と質問を繰り広げる「TAKIBI」だ。
焚き火や囲炉裏などの火を囲んで会話をすると「話に集中できる」「リラックスできる」「多様な価値観を受け入れられる」などの心理的効果があることが科学的に証明されており、本音で語り合うための仕掛けとして、焚火は度々使用されている。
この「TAKIBI」では、事前に9つのトークテーマと9つの質問が記載された質問シートが与えられている。トークテーマは、「今、ワクワクしていること」「私が幸せに感じるとき」などのポジティブなテーマから、「最近もやもやすること」などのネガティブなテーマまでさまざまなジャンルの内容が用意されており、参加者はその中の1つを選んで他のメンバーに対して自由に話す。そして、そのトークを聞いた他のメンバーは、質問シートの中から質問を選んでそのトークを掘り下げる、といった内容を人数分繰り返す。
話の内容は仕事のことからプライベートのことまで多岐にわたり、参加者たちは焚火を囲みながら本音で語っている様子が見て取れた。今回の体験会では、時間の都合上で日が高い時間での実施だったが、本来はもっと日が暮れた中で行うそうで、その雰囲気もまた格別ではないかと思わされた。
研修の終了後に参加者に話を聞いたところ、「TAKIBIでトークテーマがあったことが良かった」という意見のほか、自社で「RE」を実施することを考えた時、トークのテーマが用意されていることでスムーズに研修が行えるのではないかと感じたという人事担当者らしい意見も聞かれた。
まとめ
コロナ禍で日々働き方が多様化している現代。 実のところ、筆者も社内でほとんど話したことがない人もいれば、なかなか顔を見る機会がない人もいる。そんな人たちであっても、いざ共同のプロジェクトなどが始まれば「あまりあの人のことを知らないから……」という言葉では済まされない。逆に、普段から仲良くしているつもりの同僚であっても、本当の顔は見ることができていないという可能性も大いに存在している。
この「RE」はそんなメンバーの本心に迫り、関係性が希薄になりつつある会社の絆を新たに結び直すことができる研修になりうるかもしれない。