「働きがいのある会社」に関する調査・分析を行うGreat Place to Work Institute Japanは9月14日、2022年版 日本における「働きがいのある会社」シニアランキングを発表した。
シニアランキングは「働きがい認定企業」(2020年7月~2021年9月調査実施)の中から、特にシニア(管理職を除く55歳以上)の働きがいに優れた企業を各企業規模部門別に選出したもの。
同社は、日本社会では少子高齢化による生産労働人口の減少や人生100年時代におけるシニアの働き方支援などが、多くの企業において課題となっていることから、シニアランキングを発表したという。
シニアランキングの評価観点は、「管理職を除くシニアの従業員アンケートの結果」と「シニア従業員比率などの基本会社データ」の2点であり、日本における「働きがいのある会社」ランキングにエントリーした企業は自動的にエントリーされている。
同社は、日本企業全体、女性、若者、地域別に「働きがいのある会社」ランキングを発表しているが、シニアランキングの発表は今回初となる。どんな企業がランクインしているのだろうか。
大規模部門、中規模部門、小規模部門の第1位は?
「働きがいのある会社」ランキングは、企業規模に分けて発表される。以下、各部門のランキングを紹介しよう。
大規模部門(従業員数1000人以上)の第1位は、ディスコ(製造業)が獲得した。第2位以降は、順に、SAPジャパン(情報通信業)、プルデンシャル生命保険(金融業,保険業)、日建設計 (学術研究,専門・技術サービス業)、大和リース (建設業) となっている。
中規模部門(従業員数100-999人)の第1位は、アドビ(情報通信業)が獲得した。第2位以降は、上から、プロロジス(不動産業・物品賃貸業)、CKサンエツ(製造業)、日本ケイデンス・デザイン・システムズ(情報通信業)、iYell (情報通信業)となっている。
ランクインした企業から見えたシニアを活用するための施策
説明会では、Great Place to Work Institute Japan 代表の荒川陽子氏が、今回のランキングの傾向とシニアを活用するための施策の事例を紹介した。
荒川氏は、調査から明らかになったシニアの特徴として、55歳未満の従業員に比べて、「失敗への寛容度合い」や「公正さ」について評価が低い」の2点を挙げた。
つまり、上記の2点がシニアの働きがいを阻害しており、これらを解消することで、シニアが生き生きと働ける可能性があるというわけだ。
荒川氏は、シニアランキングにランクインした企業のシニアは尊重・信用されていると強く感じている傾向があると述べた。同氏は、この傾向から、「仕事をきちんと認められ、しかるべき報酬を得られること」「上位者が信頼に足りる行動をし、自分たちの意見を聞いてくれると感じられること」が、 シニア活躍のポイントであると説明した。
大規模部門第1位のディスコは何が違うのか?
続いて説明会では、大規模部門第1位のディスコの人財部長を務める渡辺肇人氏が、同社の組織経営について語ってくれた。
ディスコは、「DISCO VALUES」において、「あるべき姿」を明確にした企業 理念と共に、「企業としての目指すべき 方向性」「経営の基本的なあり方」「一人ひとりの働き方」を定めている。これらを日々の活動に反映できるよう体系化されており、200を超える項目が明文化されている。
渡辺氏は、同社の組織経営の特徴として、「脱官僚統治」を紹介した。これは、ルールや命令によって管理される「官僚統治」から、個人の自由と組織の運営が成り立つ「Will統治」への移行を意味する。
「Will統治」を実現するため、同社は独自の社内通貨「Will」を活用した事業経営を行っている。社員は社内通貨を活用して仕事を行い、収支は賞与に反映される。また、仕事は上司が部下に割り振るのではなく、社内通貨で価格を付けて公募・オークションでやる人が決まる。何ともユニークな手法だが、簡単なことではないと感じる。
「社内通貨であるWillを活用することで、当社の仕事は自由経済化されており、個人単位の収支が明確になっている」と、渡辺氏は語っていた。その効果としては、価値の小さな仕事が淘汰され、コストは社員自らが効率化し、能力向上を図るなど、社員が主体的に取り組むようになることがあるという。
社内通貨「Will」を基盤として仕組みは、やりたい仕事が明確であり、それを主体的に進められる人であれば、願ってもない仕組みだが、言われたことだけやって、給料がもらえればよいと考える人にとっては、苦行とも言えるかもしれない。
また、渡辺氏は同社の特徴として、考え方、仕事、配属・異動、勤務地など、とにかく何でも自由であることを紹介した。具体的には、誰がどの業務をやってもよく、異動先が合意すれば、どこへ異動 してもよく、所属部署はそのままで、どこで働いてもよいそうだ。
さらに、同社の年4回の賞与は自ら稼ぐそうだ。同社の賞与は、会社業績連動、個人成績連動、個人業績連動の評価によって決まる。川上となる顧客が潤わなければ、自分の処遇原資が得られない仕組みとなっているため、「賞与を上げるには、自分の仕事が顧客の価値提供につながっているかを意識する必要がある」と渡辺氏。やりがいはあるが、なかなかシビアな仕組みだ。
では、ディスコではシニアをどう見ているのだろうか。渡辺氏は、「当社で最も大事なことは、DISCO VALUESへの共感と実践。シニアはそれを体現し続けた貴重な人々といえる」と語っていた。
今回、シニアランキングで第1位を獲得した理由について、渡辺氏は次のように語っていた。
「シニアと言っても多様。当社は、各人が複数の選択肢から選ぶという、多様な仕組みがうまくいっているのではないだろうか。当社では、何事も楽しむがキーワードとなっており、シニア社員は楽しむことを知っているのも大きい」