CNBCは9月12日、「Google spins out secret hi-speed telecom project called Aalyria, and keeps stake in startup」において、Googleが新しい高速通信技術の実現を目指してスタートアップ企業「Aalyria Technologies」を設立したことを伝えた。Aalyriaでは、Googleがこれまでに取り組んできたレーザー通信や移動体間ネットワーク接続の技術を継承し、地球全体をカバーする高速通信ネットワークの実現に挑むという。

Googleの親会社であるAlphabetでは過去に、高高度を飛ぶ気球を使用して従来の方法ではサービスを提供できなかった地域に高速インターネットを送信する「Loon」と名付けられたプロジェクトを実施していた。Loonは技術的な課題を残したまま2021年に中止されたが、社内ではこのプロジェクトで培われた技術を継承した「Minkowski」というコードネームの新しい極秘プロジェクトが進められていたという。

このMinkowskiが、「Aalyria」というスピンアウト企業としてGoogleから独立する形で世に姿を現した。CNBCによれば、AlphabetのR&Dチームは2022年初頭にAalyriaを設立し、10年近くに渡って積み上げてきたの知的財産や特許、物的資産を譲渡したとのことだ。

  • Aalyriaの公式Webサイト

    Aalyriaの公式Webサイト

Aalyriaが核とするのは「Tightbeam」と呼ばれるワイヤレス通信技術である。これはLoonによって培われてきたレーザーをベースにした高速通信技術であり、光ファイバーケーブルを敷設することなく、遠隔地に信号を届けることができる。レーザー信号は熱や気象状況の影響を受けやすいという問題を抱えているが、Aalyriaのエンジニアはそれを克服する大きなブレークスルーを手にしていると伝えられている。

Aalyriaを支えるもう一つの要素は「Spacetime」と名付けられたソフトウェアシステムだ。これは、Loonにおいて高高度にある気球の間で高速接続を広げるために使用されたシステムで、気球の位置を監視・予測して距離や高さが変化した場合にも接続を強固に保つことができる。Aalyriaではこのシステムを、人工衛星や飛行機、ボート、車両などといった移動するオブジェクト間の接続管理に利用する計画だという。

GoogleではAalyriaのごく少数の株を保持するが、子会社にするのではなくあくまでも独立したスタートアップとして支援する方針を取るようだ。CNBCによれば、Aalyriaはすでに米国防省傘下の米国国防イノベーションユニット(Defense Innovation Unit)と商業契約を結んでおり、870万ドルの資金調達に成功しているという。