青山学院大学(青学)、九州大学(九大)、大阪大学(阪大)、富山大学、北海道大学(北大)、東北大学、東京大学(東大)、名古屋大学(名大)の8者は8月30日、世界屈指の出力を誇る阪大 レーザー科学研究所の「激光XII号レーザー」を用いて、宇宙線の生成に関わる「宇宙プラズマ衝撃波」を実験室にて生成し、その構造解明に取り組んでいることを発表した。
同成果は、青学理工学部物理科学科の山崎了教授(論文1本目主著者)、同・田中周太助教、九大大学院 総合理工学研究院の松清修一准教授(論文2本目主著者)、同・森田太智助教、同・諫山翔伍助教、富山大 術研究部工学系の竹崎太智助教、北大大学院 工学研究院 応用量子科学部門の富田健太郎准教授、阪大 レーザー科学研究所の坂和洋一准教授、同・佐野孝好助教、阪大大学院 工学研究科 電気電子情報通信工学専攻の蔵満康浩教授、名大 宇宙地球環境研究所の梅田隆行准教授、東北大大学院 工学研究科・工学部 航空宇宙工学専攻の大西直文教授、東大大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻の大平豊助教、同・星野真弘教授ら総勢34名の研究者が参加した共同研究チームによるもの。論文は2本書かれ、どちらも米国物理学会が刊行する粒状材料も含めた多体システムの集合現象に関する全般を扱う学際的な学術誌「Physical Review E」に掲載された(論文1、論文2)。
物質の第4の状態であるプラズマは、宇宙で観測可能な物質の99%を占めるとされる。プラズマは恒星からはフレアなどによって、また超新星爆発などの激しい天体現象でも生成される。それらは超音速の流体であり、衝撃波(宇宙プラズマ衝撃波)として伝播する。しかし、単なる衝撃波ではなく、仕組みはまだ不明だが、高効率のエネルギー変換器の役割も担っているという。
宇宙プラズマ衝撃波の具体的な役割の1つとして考えられているのが、宇宙線の生成だという。その宇宙線についても謎が多く、宇宙線がなぜ観測されているようなエネルギー分布を示すのかという重要な問題も、100年以上未解決のままとなっている。
こうした謎が多い最大の理由は、宇宙プラズマ衝撃波の複雑な構造にあるという。時間的・空間的な変動が激しく、また変動の様子が周囲の宇宙環境によって大きく異なることから、統一的な理解が進んでいないとする。
宇宙プラズマ衝撃波について、これまでの研究で用いられてきたのは人工衛星が捉えた実際の衝撃波のデータであったが、高速で移動する衛星による観測では現象の時間変動と空間変動の分離が難しく、さまざまな異なるスケールの時空間変動が混在することも観測を難しくさせていたという。
それに対し、もし地上実験で宇宙プラズマ衝撃波を再現できれば、こうした各種条件の制御性や現象の再現性に優れていることから、研究が飛躍的に進展する可能性があるという。
このような背景の下、国内8大学共同で行われているのが、宇宙プラズマ衝撃波の構造解明を目的とした、大型の激光XII号レーザーを用いた室内実験である。