信金中央金庫(以下、信金中金)、東日本電信電話(以下、NTT東日本)、西日本電信電話(以下、NTT西日本)は8月30日より、日本全国の中小企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するべく、業務提携を開始する。これに伴い、NTT東日本と信金中金が記者会見を開いた。
全国に254ある信用金庫の中央金融機関である信金中金と、地域に根差したデジタルサービスに強みを持つNTT東日本およびNTT西日本が連携することで、各地域の中小企業が抱える課題に迅速対応し、適切なサポートの提供を目指すという。
3社の具体的な提携内容
3社の具体的な提携内容は、「中小企業向けポータルサービス『ケイエール』の普及・拡大」「中小企業のDX実現に向けたサポート」「信用金庫のDX推進体制構築に向けたサポート」「地域活性化に向けた取り組み」の4点だ。
ケイエールとは、信金中金、NTT東日本、エメラダが開発した、中小企業が抱える日常業務のデジタル化を支援するWebサービス。2022年10月から、各信用金庫を通じて提供を開始する。同サービスでは、資金繰りの把握や電子請求書の制作などをデジタルツールによって支援する。
中小企業のDX実現に向けては、NTT東日本およびNTT西日本が持つソリューションを活用して、中小企業の課題を解決するICTコンサルティングや、DX人材の育成支援などに取り組む。
また、2社は信用金庫が中小企業のDXを推進するための態勢構築も支援するという。ケイエールが信用金庫と中小企業との新たな接点になるとして、3社は信用金庫に対してもICT環境の整備やDX人材の育成を進める予定だ。
信金中金はこれまでも、NTT東日本と共にキャッシュレス決済を活用した地域活性化への取り組みを進めてきた。今後はNTT西日本とも連携し、各社が持つネットワークを最大限に活用しながら地域活性化に貢献できる取り組みを進めるとのことだ。
信金中金の理事長である柴田弘之氏は、「これまで私たちが中小企業と培ってきたFace to Faceのつながりに加えて、デジタルサービスでも信用金庫や地域社会にとって最も身近なパートナーでありたい」と、意気込みを語っていた。
また、NTT東日本の代表取締役社長である澁谷直樹氏は、「信用金庫が持つ経営力と、われわれNTTグループが持つデジタルサービスを組み合わせて、地域を活性化して日本を元気にしていきたい。今回のNTTと信金中金の連携は今後さらなる発展も視野に入れており、キャッシュレス化や脱炭素化、産業振興などにもつなげていくために、地方自治体や大学、商店街などとも連携していきたい」と展望を述べた。
3社の提携の背景
総務省の発表によると、DXに取り組んでいない大企業が57.7%である一方で、中小企業では86.2%にも上る。また、東京23区内の企業でDXに取り組んでいない企業は62.8%であるが、地方(政令指定都市や中核市を除く市町村)では88.1%だ。このように、大企業や都市部に比べて中小企業や地方ではDXの遅れが目立つ。
その理由として、DXを推進するための人材や予算の確保が困難である企業が多いようだ。多くの中小企業では、自社が単独でDXに取り組むことは困難だと考えられる。
信金中金は全国に254ある信用金庫の中央金融機関であり、地域に根差したFace to Faceによる中小企業との強固なつながりを強みとしている。一方で、NTT東日本およびNTT西日本も、全国各地域に根差してデジタルサービスを提供してきた。今回3社が業務提携を締結することで、全国規模で中小企業のDXを支援する構えだ。
ポータルサービス「ケイエール」が提供する7つの機能
ケイエールの名称は、「経営者にエールを送る」というコンセプトに由来するという。また、サービスロゴはケイエールの頭文字である「K」とメガホンを組み合わせた意匠だそうだ。人の温かみや幸福を感じられるような黄色を基調としている。
ケイエールは、「資金繰り把握」「電子請求書対応」「電子ファイル共有・保存」「バックオフィスサービス」「課題解決サービス」「コミュニケーション・情報発信」「アラート機能」の7つの機能を持つ。
ケイエールは信用金庫ごとにこれらの機能をカスタマイズすることができ、信用金庫から地域の各ユーザーに提供する。バックオフィス業務の効率化や、資金繰り管理の効率化などに寄与するサービスとのことだ。
なお、ケイエールは2027年3月末までに25万社への導入を目指すとしている。