東北大学は8月22日、糖(グルコース)と酸素ガス(O2)から発電する「酵素バイオ電池」を搭載した、柔らかくて安全なオール有機物のバイオ発電パッチにおいて、O2還元カソードに微小スペース(O2タンク)を形成し、水中での発電維持が可能なタイプの開発に成功したことを発表した。

同成果は、東北大大学院 工学研究科の照月大悟助教、同・奥山浩平大学院生、同・張皓瑜大学院生、同・阿部博弥助教、同・西澤松彦教授(東北大 高等研究機構 新領域創成部兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、バッテリーなどの電気化学電源に関する全般を扱う学際的な学術誌「Journal of Power Sources」に掲載された。

皮膚へのマイクロ通電には、傷の治癒促進や鎮痛および薬剤浸透(美容・医療)などの効果があることから、経皮マイクロ電流を発生する皮膚パッチの研究開発が進められている。糖とO2から発電する酵素バイオ電池を電源として搭載すると、オール有機物の使い切り型バイオ発電パッチを実現でき、医療・美容分野のセルフケアの魅力的なツールになると考えられている。

バイオ発電パッチのカソードにおけるO2の還元反応は、気相・液相・固相が接する三相界面で効率よく進行することから、安定な発電を長時間維持するためには、パッチ内部における水分の適量維持と、O2ガスのスムーズな供給を実現する必要があった。

しかし、従来のバイオ発電パッチのカソードは、O2ガスを含む大気に露出していたことから、水中では、水に溶けた低濃度O2が反応する二相界面となり、発電性能が低下してしまうという課題があったという。カソードにおける内部からの水分蒸発と外部からの水分浸入を、発電性能を損なうことなく防止できれば、台所や風呂場などを含めて、日常生活におけるバイオ発電パッチの利用シーンを拡大させることが期待されるという。

そこで研究チームは今回、酸化還元酵素「ビリルビンオキシダーゼ」を炭素繊維布に固定化したO2還元カソードの表面に、酸素透過性の高いシリコーンゴムの一種「ポリジメチルシロキサン」(PDMS)の薄膜を接合することに挑戦。PDMS薄膜の厚さは、50μmとされた。