新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は8月23日、同機構の地熱発電技術研究開発の一環として、東芝エネルギーシステムズがインドネシアで行った実証実験で、トラブル発生率を導入前に比べて20%以上抑制できる予兆診断システムを完成させたと発表した。
同実証実験は、IoTおよび人工知能(AI)技術を適用した「ビッグデータ解析技術を活用したトラブル予兆診断技術」を使用するシステムについて、2019年10月から2021年2月までインドネシアのパトハ地熱発電所で実施した。
トラブル発生率の抑制に関しては、同事業において、地熱発電所のような平常運転時も蒸気の状態などの変動が大きい監視点でも、適切に監視が可能な検出精度を設定できる手法を確立。
この手法を予兆診断システムに実装することで、従来の火力発電所向けの手法ではできなかった異常兆候など、トラブルとなる事象の予知に成功したという。
実証実験の期間中は、パトハ発電所に設置したシステムと、インドネシアの国営地熱発電会社であるGeo Dipa Energi(GDE)の本社、東芝エネルギーシステムズの各拠点(川崎、横浜、府中など)をリモート接続でつなぐ予兆診断システムの遠隔監視を可能とし、予兆を検知すると関係者にメール通知する機能を実装し、利用率の向上につなげたとのことだ。
併せて、地熱発電所の稼働率を向上させるため、稼働率低下の要因であるタービンへのスケール(水中に含むカルシウムやマグネシウムなどの鉱物が化合物となって機器の側面などに析出した物)の付着を、薬剤の使用により20%以上抑制する目標を掲げた実証試験も実施。
国内の地熱発電所で熱蒸気を使用し、経年的なタービンスケールの付着を薬剤注入とスプレーを組み合わせた模擬試験装置で検証した結果、20%以上の抑制効果が確認できたとしている。
なお東芝エネルギーシステムズは、NEDOの事業終了後にパトハ発電所とIoTサービスの契約を締結し、2022年7月からこの予兆診断システムの有償サービスを開始しているとのこと。
NEDOは引き続き「2050年のカーボンニュートラルの実現」に向け、IoTやAI技術などの利活用により発電設備の効率的な運用と利用率向上などを目指し、より一層の地熱発電の導入拡大を促進するという。