アジレント・テクノロジーは8月10日、オンラインで記者説明会を開催し、ラボ情報管理システムとプロセス分析計分野への新規事業参入に関する説明を行った。
プロセス分析分野に参入を表明
コロナ禍における医薬品・バイオ医薬品の開発および生産においては、自動化・遠隔化ニーズが高まりを見せる一方で、プロセスを手動でモニタリングしている工程があるという。また、FDAに代表されるような規制要件として、リアルタイム分析を可能にし、プロセスの理解、速度、効率を向上させることでプロセスの最適化とコストの削減を促進する「プロセス解析工学(Process Analytical Technology:PAT)」や連続生産、Quality by Designといったものへの対応が求められるようになっているという。
連続生産におけるプロセスモニターとしては反応槽内部の状況を調べるインラインサンプリング、モバイルGCやラマン分光を活用してサンプルを反応槽の近くで分析するアットライン、分析ラボにサンプルを持っていって行うオフラインサンプリングなどがあるが、同社は今回、反応槽から自動サンプリングして、オンラインでサンプリングを行うことを可能とする「オンライン LC システム」を日本市場に向け、2022年9月より本格展開していくことを明らかにした。
バイオ医薬品における品質確保のためには、恒常性や頑健性のあるプロセスの確立が求められるため、分析作業が重要となっており、そのサンプル分析の箇所も多岐にわたるため、そうした各工程で必要とされる分析をオンライン化することで負担を軽減させることが可能になると同社では説明する。
例えば、バイオ医薬品の場合、重要品質特性、重要工程パラメータの理解促進によるバイオ医薬品の品質向上と開発期間の短縮、培地分析などに、低中分子医薬品、ファインケミカル、化学分野の場合、反応追跡や不純物分析に、環境、農薬、食品、エネルギー分野の場合、環境モニタ(排水、川)、農薬の製造、食品・飲料成分、添加物、混入物質のモニター、バイオ燃料の反応モニターといったものに適用できるとしている。
これまで同社は、アナリティカルLC、プレパラティブLCの2本立てであったが、ここに新たにオンラインLCが加わることとなる。なぜ、プロセス分析へ参入することを決定したのかについて同社では、「連続生産、PATのニーズ拡大」、「堅牢なアジレントのHPLCをプロセスで使いたい、という顧客からの要望」、「アジレントのグローバル戦略としてのバイオ医薬品市場への投資」といった意味合いを踏まえた結果だとしている。
具体的な利用については、反応槽からオンラインLCにサンプルを送り、クロマトグラフィデータシステムアプリケーション「OpenLab CDS」を用いてクロマトグラムを得た後、CDSにアドオンする形の「Agilent オンラインLC モニタリングソフトウェア」を用いて、サンプルのスケジューリングから前処理、メソッド作成と実行、データの視覚化とレポートまでを実行することが可能になるという。
また、オンラインLCのポイントとなるのが「オンラインサンプルマネージャー」で、プロセス領域と分析領域を結び付けるハードウェアとなる。前段、後段と接続された外付けと内蔵のデュアルバルブシステムを採用し、サンプルのLCへの直接注入、自動希釈機能、オンラインサンプル前処理などを可能としたバルブユニットと、オートサンプラで構成されており、直接LCに注入した分析のほか、いったんバイアルに採取し、追加のオフライン分析も可能だという。さらに、サンプル保管機能によるマルチメソッド、サンプル保存、追加のオフラインによる品質管理なども可能となっており、結果の信頼性向上に貢献すると同社では説明している。
LCそのものは、1260 Infinity II Prime LC システムなど既存のものを利用可能であり、こうした既存LCを有しているユーザーもオンラインサンプルマネージャーやオンラインLC モニタリングソフトウェアを追加することでオンラインLCへとアップグレードすることも可能だという。