機械部品の製造や販売などを手掛けるミスミが公募する「ミスミ学生ものづくり支援」。ものづくりにチャレンジする工学系の学生に馴染み深いこのプログラムは、今年で14年目を迎える。長きに渡って学生をサポートする取り組みと目的、その先に見据えるものづくりの未来などを、ミスミグループ本社の広報チーム担当者に伺った。

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これまでに延べ2200もの学生ものづくり団体を支援

--ミスミ「学生ものづくり支援」とは、どのようなものですか?

ミスミ担当者(以下、ミスミ):工学系の学生などから、競技大会への参加や社会貢献活動などに寄与するものづくりのアイデアや想いを募り、選考を通過した団体に5万円(通常支援枠)あるいは10万円(特別支援枠)相当の商品を無償提供するというプログラムです。

当社のECサイト「MISUMI-VONA」やカタログにある3000万点を超える商品が提供可能で、ここから学生が欲しいものを自由に選ぶことができます。ただし、支援プログラムの期間中に出荷できる商品を対象としていて、納期が外れるものや在庫切れで入荷待ちの商品などは提供することができません。

--学生はどんな商品を選んでいるのでしょうか。

ミスミ:ネジやナットといった基礎用部材が大半を占めています。工具関連も少なくないですね。

  • ミスミが提供するECサイト「MISUMI-VONA」では、基礎部材から工具までさまざまな商品を取り扱っている

    ミスミが提供するECサイト「MISUMI-VONA」では、基礎部材から工具までさまざまな商品を取り扱っている

--大学生や高等専門学校生などへの支援を始めたのはいつごろですか?

ミスミ:2008年に、学生向けのロボットコンテストに参加する一部の学生を支援したのが最初です。その翌年から「ミスミ『学生ものづくり支援』」の名称で、現行の公募による支援プログラムを続けています。学生とのコミュニケーションを促進させる目的で、事業部門が主体となって始めた取り組みです。

スタート当初から1団体あたり5万円分の支援枠を設けていて、2021年度には新たに10万円分の特別支援枠を加えました。後者は、特に優れた活動をしていると審査で認めた団体を支援するものとなります。

公募を始めてから応募団体の数は順調に推移しており、学生からの認知度は年々高まっていると思います。2016年以降は毎年200件を超える応募をいただいており、選考を経て実際に商品提供を行なった団体は、延べ2200を超えました。

社会課題解決などテーマが広がり続ける学生ものづくり

--ものづくりとひと言にいってもジャンルはさまざまです。特に応募が多い分野などはありますか?

ミスミ:過去の応募で多いのは、ロボット系やロケット系、学生フォーミュラなど競技会への参加を目指す学生ですね。最近では、社会課題の解決を見据えたユニークなものづくりを念頭に置いた応募も目立ってきました。

害獣問題に対応するロボットや、ゴミを拾い集めるロボット、災害現場などで被災者を探知するロボットといった、社会課題の解決をテーマにしたものが増えてきたのは間違いないですね。

--競技参加のものづくりでは性能アップが主題でミスミの商品提供が有益なのはわかります。一方で、社会課題の実現だとベクトルが少し違う気がします。幅広い分野の応募を選考するのは大変だと思いますが……。

ミスミ:公募は専用のWebサイトから行いますが、その中で活動内容や取り組みのPRポイントなども書いていただきます。ひとつひとつチェックしながら、計画の実現性や未来のものづくりに貢献したいという熱量などを見ていきます。

その中で、社会課題解決のような新たなテーマが審査ポイントのひとつになってきたのは確かです。ベクトルが違うのでは、という考え方もありますが、まずはすべての応募団体を同じ土俵に上げて、自分たちの取り組みの重要性を訴えたいという学生の思いを十分に汲み取るよう気をつけながら選考していきます。ものづくりにかける情熱を重要なポイントに据えている点は当初から変わっていません。

応募された団体すべてを支援するのは、残念ながらできません。熱い思いが伝わる各々の応募の中から、ある程度の枠に収めるという苦しみがあるのも事実です。