花王は8月8日、タオルの「くすみ」に関する研究レポートを発表。くすみに大きな影響を与えるバイオフィルムの形成を抑制する技術を開発したと明らかにした。

洗濯における新たな清潔の提案につながる技術開発を進める花王は、2022年4月、くすんだタオルに菌体外マトリクス(EPS)と菌の複合体であるバイオフィルムが存在することを解明し発表している。

  • くすんだタオルに存在するバイオフィルム

    くすんだタオルに存在するバイオフィルム(出典:花王)

同社は今回の研究で、バイオフィルムが存在するタオルから菌の分離培養を行った。その結果、メチロバクテリウムやロドトルラなどの色素を産生するピンク色の菌が高い割合で存在することがわかったとしている。

これらの菌は、タオルにおけるくすみなどの着色に関与している可能性がある上、これらの菌が算出するEPSには粘着性があるため、泥などの有色の粒子を吸着しやすいという。

  • バイオフィルムが泥粒子を吸着する様子

    バイオフィルムが泥粒子を吸着する様子(出典:花王)

同研究成果から、タオルの落としにくいくすみにバイオフィルムが大きな影響を与えている可能性があると考えた花王は、バイオフィルム形成を抑制する技術開発に着手。その中で、特定のアルキル硫酸塩アルキレンオキサイド付加物が、EPSの構成成分である多糖の産生を抑制する効果を持つことを発見したとのことだ。

この性質を利用し、新処方によって界面活性剤を配合。その効果を確認するため、2枚のタオルを新処方で洗うものと従来洗剤で洗うものに分け、実家庭における1か月半の使用を通して比較したという。その結果、新処方で洗濯を続けたタオルでは、タオル中の多糖量が少なく、かつ見た目の白さの度合いが高いことが確認されたとしている。

  • 新処方と従来洗剤でのバイオフィルム付着状態の比較

    新処方と従来洗剤でのバイオフィルム付着状態の比較(出典:花王)

この結果を受け花王は、バイオフィルムの形成を抑える技術によって、衣類の落としにくいくすみに対処できるようになるとしており、引き続き衣類に発生する生活者の課題解決に向けて、研究を進めるとのことだ。

なお、同研究内容は、2022年6月9日に開催された2022年繊維学会年次大会にて発表されたという。