ガートナージャパンは8月2日、データとアナリティクス(D&A)のガバナンスの取り組みに不可欠な7つの要素を発表した。

1つ目は「価値や成果」。ガバナンスに関連する活動が組織の価値や事業の成果に結び付いていることを証明するために、測定可能な指標を定め、定期的にステークホルダーに示すことが必要だとしている。

2つ目は「決定権と責務」。ガバナンスの原則やルールを定めるには、経営層や事業責任者のようなビジネス上の意思決定権者の合意が不可欠という。役員会や経営会議と同様に、ガバナンスの意思決定機関を設け、そこで意思決定が行われるようにしなければならないと同社は指摘している。

3つ目は「信頼」。D&A資産のすべてが組織内からもたらされるとは限らず、パートナー企業や情報ブローカー、オープン・データなど、組織外から得るものも必然的に多くなる。組織内外に分散し、複雑化したD&A資産のガバナンスを実現するためには、来歴管理やキュレーションが欠かせないとしている。それらを含めて、確立された信頼モデルによって信頼性を確認し、安全を確保する必要があるとのことだ。

4つ目は「透明性と倫理」。同社は、ガバナンスは組織の掲げる倫理原則に従って行われなくてはならないとし、その状況について、組織内のみならず外部の監査に対しても十分な透明性を確保する必要があるとしている。D&Aガバナンスを執行する組織は、業務プロセスを定義して手順書を作成し、ガバナンスの実行方法や関係者の役割と責任を明確化するべきとのこと。また、すべての投資や支出について監査証跡を残し、ガバナンスの決定事項との関係を明確にする必要がある。

5つ目は「安全性の担保」。D&Aガバナンスは、リスクを意識しながら取り組むことが重要とのこと。情報リスクとセキュリティの管理は、事後的に行われるものではなく、ビジネス成果を目指しつつも、ガバナンスによってリスクを調整する本質的な取り組みであることが肝要のようだ。

6つ目は「教育」。ガバナンスを扱うのは人であり、ガバナンスは人々の行動に変化を促す。そのため、何をどのように変える必要があるかを理解できる教育プログラム、その効果や浸透状況を測定する指標、人事評価との連動などについて、それぞれの専門組織と協力して整備することが重要という。

7つ目は「協力と文化」。組織のリーダーは、ガバナンスの考え方を統制から協力へと変化させ、その認識を組織各所に浸透させる必要があるとのこと。変革を支援するプログラムを整備し、ガバナンスが監視や統制の手段でないことはもちろん、方針や標準を周知してより良い成果につながる行動を促す手段として認識されるように努めることが重要とのことだ。

なお、以上のガバナンスの7つの要素に取り組む際の順序は特に決まりはないとし、「決定権と責務」のようなガバナンスを実現するための組織は、意思決定を行えるよう最初に体制を整える必要があるという。また、「価値や成果」を中心として、すべての要素を取りそろえることが重要とのことだ。

アナリストでシニアディレクターの一志達也氏は、「現在組織が直面している複雑で多様なビジネス上の課題に対応するために、D&Aリーダーは経営層を巻き込んで、適切なD&Aガバナンスの基盤を整備しなければならない」と述べている。