世の中に流通している製品の中に絶対に故障しないものは存在せず、故障が発生した場合でも致命的な状況に陥らないような対策が施されている。その対策を構築する際の考え方の1つがフェールセーフだ。

今回の記事では、フェールセーフの特徴や具体例、製造業以外で仕組みを構築する場合などに活用する際の流れについて解説する。どうしても避けるべき事象がある場合には、フェールセーフの仕組みを構築してみて欲しい。

フェールセーフとは?

製造業におけるフェールセーフとは、製品に何らかのトラブルが発生し故障した際に、危険な状態にならないように、製品が安全側の状態になるように設計する考え方だ。

安全側の状態とは、基本的に製品の機能を停止している状態である。しかし、製品によっては速やかに機能を停止することで、危険な状態が継続してしまうものがあるため、トラブルが発生する状況を詳細に想定し、フェールセーフ処置を決定する必要がある。

フェールセーフとフェールソフトの違い

フェールセーフと類似の用語として、フェールソフトという考え方がある。

フェールセーフは、トラブルが発生した際に安全な状態に移行することで、安全を最優先にする考え方だ。一方で、フェールソフトはトラブルが発生した際に一部の機能を縮小してでも、機能の維持・継続を最優先する考え方である。

どんなトラブルでも機能停止するフェールセーフの考え方ばかりでは、製品の使い勝手が悪いため顧客満足度は大きく低下してしまい、製品競争力が無くなってしまう。

そこで、トラブルの種類に応じてフェールセーフとフェールソフトの考え方を組み合わせることで、製品の競争力を維持することができる。

製造業におけるフェールセーフの活用例

ここで、イメージを明確に持ってもらうために、具体的なフェールセーフの活用例を3つ紹介する。

自動運転中に障害が発生すると路肩に停車する

世界中で自動運転車の開発が進められており、近い将来には自動運転車が公道を走行しているのが珍しくない状況が想定される。

自動運動車両には、適切な処置をしないと周囲を巻き込んだ交通事故に繋がるおそれがあるトラブルが存在する。もしそのようなトラブルが発生した場合に、機能停止としてその場に停車してしまうと、後続車両の追突のおそれがあり、安全状態にならない。

そこで、トラブルが発生して自動運転が継続できない場合には、交通の流れに影響を与えないように、路肩まで移動してから停車するような機能が開発されている。周囲への通知はハザードランプなどで行い、安全状態を確保した上でドライバーに引き継がれる。

工作機械は障害が発生した際に自動的に電源がOFFになる

製造業の工場で使用されるような工作機械は、トラブルが発生した状態で稼働し続けることで、製品の破壊や作業者のけがに繋がるおそれがある。

工作機械の安全状態としては、機械が稼働停止している状態が定義される。そこで、何らかのトラブルを検知したら自動的に電源をOFFすることで、トラブルによる危険な状態を避けられる。

エレベーターは急落下しないように非常止め装置が働く

エレベーターを支えるロープが切断してしまった場合やエレベーターが意図せず急降下するトラブルが発生した場合には、エレベーターが地面に落下することを防ぐ必要がある。

そこで、エレベーターの降下速度が一定以上に達すると、非常止め装置が自動的に作動することで機械的にエレベーターを止め、安全を確保できる仕組みが構築されている。

フェールセーフを製造業以外で活用するためには?

製造業では一般的なフェールセーフの考え方を、製造業以外で活用するためにはどのようにシステムを構築していけばいいのか、その流れを解説する。

Step1:まずは、避けるべき事象を明確にする必要がある。フェールセーフは避けるべき事象に繋がらないようにすることが目的であるため、ここがぶれてしまうとなんの対策を行っているのかわからなくなってしまう。

Step2:次に、避けるべき事象を避けた結果、どのような状態になっていればいいかという安全状態を定義する。製品ではない場合の定義は難しいが、基本的には機能停止と同等の状況を作りだすのが望ましい。

Step3:Step2と並行して、Step1で検討した避けるべき事象に繋がる要因を整理することが重要だ。ここで、要因は1つではないこともあるので、複数ある前提で多面的に検討する必要がある。できるだけ複数人で検討することが望ましい。

Step4:Step3で抽出した発生要因ごとに、それが生じたことを検出できる手段を構築する。この手段は自動的にできるものが望ましいが、もし難しい場合には仕組やルールの中に要因となる事象が発生していないか確認することを組み込むといいだろう。

Step5:危険な事象に繋がる発生要因を検出したら、どのように安全状態に移行するかという処置を検討する。できるだけ複数の要因をカバーできるような、汎用性の高い処置が望ましい。

人間関係などに当てはめるのは難しいかもしれないが、仕組みを構築したり、ツールを開発したりする際の考え方の1つとしては、役に立つだろう。

まとめ

今回は、製造業で広く用いられる考え方として、フェールセーフの活用例や製造業以外で活用するための流れについて解説した。

フェールセーフは基本的に機能を止めることになるため乱用は望ましくない。しかし、どうしても避けるべき事象がある場合には、今回紹介したような考え方で、フェールセーフを構築してみるといいだろう。