日本電信電話(以下、NTT)は7月21日、フィールド環境において敷設済の光ファイバケーブルと光伝送装置を用いて、新規機能を組み入れることによりさまざまな故障の予兆を検知して予兆パッケージ部位を推定する技術を実証したことを発表した。
従来は保守運用に活用されていなかった光信号特性情報を収集して解析することにより、サービス影響前あるいは警報発出前の故障の予兆から、故障交換の対象となる光伝送装置のパッケージ単位での部位特定に成功したとのことだ。
今回同社が実施したのは、敷設済の光ファイバケーブルと光伝送装置を用いた実験構成に、複数のパッケージ部位に対して複数の故障予兆を模擬する模擬系と光信号特性情報を収集、解析する新規機能部を組み入れた実証実験だ。その結果、実運用環境と実装置挙動による光信号変動を加味しても故障予兆の部位特定が可能であることを確認したという。
同技術は、光パスを終端し信号処理を行うDSP(Digital Signal Processor:デジタルコヒーレント通信システムの中心となるデバイス)から多くの光受信信号の解析情報と、新たに光パスの各中継区間からも光スペクトル情報やOSNR(Optical Signal to Noise Ratio:光信号強度と光雑音強度の比)などの情報を収集して、受信端点情報と光伝送網構成情報と組み合わせて解析を行うことで、高い精度の予兆部位特定を実現するもの。
これにより、従来のパフォーマンスモニタ情報だけでは検知が困難であった光信号の特性変化も予兆として捉え、特定粒度をパッケージ部位までとした予兆部位の特定ができるようになったという。
また、今回の実証実験では、光伝送装置のトランスポンダと中継部位を別の光伝送システムにより構成するマルチベンダディスアグリゲーション構成としており、監視制御の連携に制約がある複数システム間の光直結接続を含めても、光信号特性そのものを解析することで予兆パッケージ部位の特定が可能であることも確認できたとのことだ。
NTTは今回、同社が掲げるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想におけるAPN(All Photonics Network)の実現に向けて、光伝送装置の大容量化に対応するために、サービス影響前に予兆パッケージ部位を特定できる技術の確立を目指したという。
この技術を用いた予知保全により、故障対応業務の品質の向上や、突発的なサービス断回避を実現する新たな保守運用も見込める。同社は、同技術を用いた運用性の向上によりIOWN APNの導入推進に貢献するとしている。