東京商工リサーチは7月20日、2022年(1月~6月)上場企業「早期・希望退職」実施状況を公開した。同期に早期・希望退職者を募集した上場企業は25社(募集人数4,515人)で、新型コロナ感染が拡大した2020年以降では、社数、募集人数がそれぞれ最少を記録したという。

上半期ベースの早期・希望退職を実施した企業は、リーマン・ショック直後の2009年に146社を記録した。その後は減少をたどり、2015年は19社と20社を下回り、2018年は3社にとどまった。しかし、コロナ禍での外出自粛に伴う消費低迷や遠出需要の落ち込みなどがアパレル、旅行、小売、交通インフラの業績を直撃し、2020年は41社、2021年は56社に急増したとのこと。

そして、停滞していた経済活動が動き出した2022年は、コロナ禍の経営への影響も限定的となり、コロナ禍が直撃した業種でも減少に転じたという。しかし、新たに円安、資源高、ウクライナ情勢など、経済活動に影響を及ぼす事態が生じており、内需型産業で希望退職を実施するなど、予断を許さない状況が続くと、同社は指摘している。

上半期に早期・希望退職者の募集が判明した上場25社の業種別は、アパレル・繊維製品、電気機器、機械が各3社で最多だったという。

外食や航空・鉄道を含む運送、小売などコロナ禍が経営を直撃した業種は、2022年に入り募集した企業はゼロだった。コロナ禍も3年目に入り、こうした業種での募集に一服感が出ているとのこと。

一方、電気機器、機械、医薬品、金属、国内外に拠点を構える製造業で募集が目立つことから、今後、長引く資源高や円安加速を背景に、募集が増勢に転じる可能性も出ていると同社は分析している。

早期・希望退職の募集が判明した25社の直近の通期損益は、約半数の12社(構成比48.0%)が黒字企業だったという。富士通や日本ペイントホールディングスなど、国内外に拠点を置く大規模な製造業は、増益にも関わらず募集に踏み切っている。

募集人数(募集時点の人数が非開示の場合は応募人数を適用)は、富士通が50歳以上の幹部社員(一般に管理職相当)と定年後再雇用従業員ら3,031人で、人数では最多だった。3,000人以上の募集(応募含む)は2016年の東芝(3,449人)以来、6年ぶりとのこと。

100人未満の募集が12社(構成比48.0%)とほぼ半数を占め、2022年は少人数の募集に集中している。

  • 2022年 主な上場企業 希望・早期退職者募集状況 資料:東京商工リサーチ