エリクソン、航空宇宙企業の仏タレス、クアルコムテクノロジーズの3者は、地球低軌道を周回する衛星を利用した非地上系ネットワークへの第5世代移動通信システム(5G)導入計画を発表した。
現在、複数の企業が衛星を利用した非地上系ネットワークの構築を目指している。非地上系ネットワークが完成すると、地上のカバレッジがない辺境や海洋など、データ接続機能に制限がある従来の衛星電話システムでしかカバーできなかった場所を含め、世界中のあらゆる場所に広帯域のデータサービスが提供されるようになる。
また、宇宙をベースとするネットワークは、地上ネットワークで大規模な障害や災害などが発生した場合、そのバックアップの手段としても活用することが可能となるほか、セキュリティ機能的には、政府機関の通信における安全保障や公共安全に関わる政府ネットワークの強化も、主なユースケースとして見込まれているという。
今回の計画は、グローバルな通信標準化団体3GPPに2022年3月に認可を受けて初の3者による試験と検証となる。まず、各社がそれぞれ複数の研究やシミュレーションを含む詳細な調査を行った後、スマートフォン(スマホ)のユースケースにフォーカスした5Gの非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Networks:5G NTN)の試験と検証に移行する予定としている。
試験の目標は、5Gスマホ、衛星ペイロード、地上5Gネットワークなど、非地上系5Gネットワークを実現するために必要なさまざまな技術的要素を検証することとしている。
また、5G NTNがスマホのフォームファクターでサポートできることを検証し、将来の5Gスマートフォンが実質的に衛星電話として利用できることの検証も目的としている。最初の試験は、欧州の多くの宇宙関連産業が拠点を置くフランス国内の宇宙環境を模した場所で行われるとしている。
各社は地上装置を使い、軌道上に展開された衛星と、地球上のさまざまな場所にある5G無線アクセスネットワークに接続された5Gスマホ間における、5G無線の伝搬と時間遅延をエミュレートする計画だという。
各社の役割は、エリクソンが高速で移動するLEO衛星経由で運ばれる無線信号(宇宙の真空と地球の大気を通過する5G電波の挙動)を処理するように変更された5GvRANスタックを検証する予定のほか、タレスはLEO衛星への展開に適した5G無線衛星ペイロードを検証する予定。そしてクアルコムテクノロジーズは、将来の5Gスマホが非地上系ネットワークにアクセス可能かを検証する試験用電話機を提供する予定としている。
なお、非地上系5Gネットワークは3GPPベースのテクノロジーなので、標準化された製品とコンポーネントの大きなエコシステムを活用することが可能であるほか、新しい仕様により5Gデバイスに非地上系ネットワークのテクノロジーを搭載することも可能となるので、テクノロジーベンダーがデバイス間で非地上系5Gネットワークの互換性を、簡単かつ迅速に拡張できるようになるはず3社は説明している。