労働政策研究・研修機構が発表した2021年の産業別就業者数では、製造業が15.6%となっている。これは、15.9%でもっとも割合が多い卸売業・小売業に続いて第2位であり、製造業は日本の基幹産業の1つと言える 。

製造業では、基幹産業として競争力を確保するために、さまざまな仕組みや考え方を取り入れてきた。その中には、他の産業でも活用できるものが多くある。

そこで、製造業で主に使われている考え方について紹介する。製造業に従事している方以外にも、仕事のヒントとなれば幸いだ。

今回の記事では、フールプルーフについて解説する。

フールプルーフとは?

フールプルーフ(fool proof)は、安全工学で用いられている用語だ。設備や製品などの使い方を間違えたとしても、大きな危険を及ぼさない、もしくはそもそも間違った使い方ができないようにする設計手法を指す。

人のミスを100%無くすことはできないので、ミスができない仕組みを構築することで、危険な状況を未然に防ぐという考え方だ。製造業、特に工場では「ポカヨケ」という用語が用いられており、それと同義である。

特に、生産設備などを扱う工場では、何も対策が取られていないと少しのミスで大けがや設備の破壊につながる可能性がある。そこで、フールプルーフの考え方に基づいて対策を取ることは必要不可欠だ。

フールプルーフとフェールセーフ

フールプルーフと類似の用語として、フェールセーフという用語がある。

フールプルーフは、ミスによる事故やトラブルが発生しないように、未然防止の仕組みを構築する考え方だ。一方でフェールセーフは、防ぎきれない事故やトラブルが発生してしまった場合に、影響を最小化できるような仕組みを構築するという考え方である。

これは「どちらが優れているか?」という議論をするものではなく、状況に合わせてどちらか、もしくはその両方をうまく組み合わせていくことが重要だ。

製造業におけるフールプルーフの活用例

製造業では、フールプルーフの考え方が当たり前のように活用されている。そのため、フールプルーフという用語を知らずに、その考え方を使っている人も多いだろう。

ここで、製造業におけるフールプルーフの活用例を紹介する。

工場設備に施されるフールプルーフの例

工場ではさまざまな生産設備が導入されており、誤った操作をすると、製品や設備の破壊、作業者のけがなどにつながる可能性がある。そこで、人為的なミスが事故につながらないようにフールプルーフの仕組みを構築することが重要だ。

例えば、意図せず体が設備に触れてしまった際に設備が動作しないように、設備の稼働条件に両手を使わないと実現できない操作を設定したり、複数の手順を設定したりすることが多い。

また、設備の稼働中に人が触れないように扉などのガードを構築し、もし稼働中にその扉が開いたら設備を緊急停止するような設定が用いられている。

このように、設備の特徴や作業の性質に合わせたフールプルーフの仕組みが構築されている。この仕組みを構築することで、設備の導入コストが大きくなったり、生産性の低下につながったりする可能性がある。

しかし、安全を第一に考えることに加え、対策をせずに事故が発生してしまった場合に生じる社会的・経済的な損失を考慮すると、迷いなく導入するべきだろう。

誤入力を検知する設計ツール

フールプルーフの考え方は、工場などの生産現場だけでなく設計現場でも用いられている。

例えば、電子化が進んだ複雑な機構を有する製品では、少しの設定ミスが大きなトラブルを引き起こす可能性がある。そのため、複数桁の数値を設定する際に、規定の桁数以外を入力するとツールが誤入力と判断しエラーを出力することで、桁数の打ち間違いなどを防ぐことが可能だ。

また、作業時にミスが生じやすい繰り返しの単純な作業などは、自動で行えるような状況を構築することで、ミスを防ぐといったこともフールプルーフの活用といえる。

日常生活における工業製品のフールプルーフ

私たちが日常生活で使用する工業製品にも、フールプルーフの考え方は活用されている。代表的なものでは、洗濯機や自動車が挙げられる。

洗濯機は蓋が閉まっていないとスタートできず、稼働が停止してからでないと蓋を開けられない。これは、回転部への巻き込みを防ぐ役割を担っている。

また、ほとんどの自動車ではシフトレンジをPやNに入れ、ブレーキペダルを踏み込みながらでないと、エンジンをかけられない。これは、誤って車両が動き出してしまうことを防いでいる。

フールプルーフを製造業以外で活用するためには?

フールプルーフは、避けたい事象を未然に防ぐ仕組みを構築することなので、製造業以外でも活用できる。そこで、うまく仕組みを構築するための流れを紹介する。

避けたい事象の明確化

まずは、どの事象を避けたいのかを明確にする必要がある。また、どのような経緯・プロセスを経て、その事象が生じるかもあわせて明確にすることが重要だ。

あらかじめプロセスまで明確にしておくことで、どの工程でフールプルーフの仕組みを構築すればいいのか、明確になる。

1つのミスで避けたい事象が生じないようにする

避けたい事象と、そこに至るプロセスが明確になったら、後は1つのミスでその事象が生じないような仕組みを構築すればいい。

例えば、人のミスが介入しないように、作業を自動化することが考えられる。また、そのミスが生じないような手順を新たに加えることも案の1つとなるだろう。

単に「チェックする人を増やす」などの案は、付加価値の低い作業を増やすことになってしまうため、できるだけ工数を増やさずに仕組化することが重要だ。

まとめ

今回は、製造業で用いられている考え方として、フールプルーフの活用例や製造業以外で活用するための流れについて解説した。

すでに、何気なく構築している仕組みがフールプルーフの考え方に基づいていたと気付くこともあるかもしれない。改めて、意識して構築することで、より効果を大きくできる可能性があり、さらに他の業務にも展開できる余地がある。