6月29日から7月1日まで東京ビッグサイトで開催されていた自治体・公共向けの専門展示会「自治体・公共Week2022」。本稿では、同展示会に出展していた、凸版印刷の「印刷会社」というイメージを覆す「自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進する4つのサービスを紹介する 。
1つ目は、感染症情報管理アプリケーション「PASS-CODE」だ。
「PASS-CODE」は、企業・自治体・施設などを対象に提供されており、新型コロナウイルスの流行で業務として増えた「感染症情報」の管理や活用をデジタル化して簡単に行えるようにするもの。 具体的には、ワクチン接種履歴や抗原検査結果の登録などが行えるという。
「PASS-CODE」のポイントは「ワクチン・検査パッケージを1つのアプリに格納」「ワクチン接種履歴情報を事務局で確認」「アプリに対応した抗原検査キットを準備」「イベント会場などで使えるチェックイン機能」の4点だ。
凸版印刷は「PASS-CODE」について、2021年11月に札幌市と「『さっぽろPASS-CODE事業(試行)』に関する協定」を締結した。これにより、「PASS-CODE」を国のワクチン・検査パッケージ制度における接種履歴提示手段として活用するほか、市民・事業者などに日常生活・社会経済活動において活用してもらうことなどを想定し、新型コロナウイルス感染防止対策と社会経済活動の両立に同サービスがどう貢献できるのかを検証することを目的に実証実験を行っているという。
2つ目に紹介するサービスは、自治体向け通知物電子送付サービス「Speed Letter Plus」だ。
同サービスは、紙で郵送している通知物をデジタル化し、マイナンバーカードで認証されたIDへ送付するもの。 各種通知物をデジタルデータとして送付することで、職員側では封入・封緘作業や郵送コスト削減、配達ミスの防止などを実現し、また、住民側では各種通知物をオンラインで時間や場所にとらわれずに受け取れるという双方の利便性を向上しているという。
登録方法は、来庁して対面でマイナンバーカードの公的個人認証を行い、本人を特定したIDを付与する方法と、個人IDを記載した登録依頼DMを送付し、その情報をもとにWebサイトから必要情報を登録する方法の2種類が用意されており、セキュリティの確保と個人の都合に合わせた仕様になっている。
3つ目のサービスは、自治体向け窓口申請業務電子化サービス「Speed Entry Government」だ。
同サービスは、自治体の窓口申請業務において、「おくやみ関連」の申請手続きに関して、紙の申請書への記入をタブレットなどデジタルデバイスを利用した手続きに置き換え、ペーパーレス化と業務効率の向上を実現するもの。
同サービスは、故人ごとに必要な手続きが異なったり、何度も同じ氏名や住所などの基本情報を書かなくてはいけなかったりといった課題を解決するために開発されたもの。「はい・いいえ」などの回答形式で簡単な質問に答えることで故人の状況に応じた必要手続きを洗い出したり、QRコードを出力することでタブレットに入力した情報は途中保存・入力途中からの再開できたりするようになっているという。
また「おくやみ関連」の申請は高齢者が行うことも多いが、「手書き文字認識機能」を搭載しているため、ソフトウェアキーボードに不慣れな遺族でも直感的に扱うことができ、入力負担を軽減しているとのことだ。
最後に紹介するのは「認知症体験VR」だ
同サービスは、スマートフォンと「VRscope」を活用したVR体験により、認知症の症状や認知症の顧客応対を疑似体験できるサービス。コンテンツは疑似体験だけにとどまらず、認知症の解説と適切な応対ポイントで構成されているため、認知症の方の行動への理解と適切な応対方法まで、まとめて学習することが可能になっているという。
提供されているコンテンツは3つあり、認知症の人の本人目線の映像を体験する「本人体験編」、認知症の顧客を応対する社員目線を体験する「業務応対編」、運転時の軽度認知障害の人とその周囲の人からの目線を体験する「運転編」に分かれている。
筆者も実際に「本人体験編」を体験させていただいたが、実際には見えないはずのものが見えたり、周囲と意見が食い違ってしまったり、自分の見えている世界を周りが理解してくれないもどかしさを体験することができた。 このVRで学んだことを生かせば、近親者の「あれ、最近様子がおかしいな」という状況に気が付くことができるかもしれない。
東京都福祉保健局は既に同サービスを導入しており、東京都内在住者を対象に、認知症の普及啓発を目的とした「認知症体験VR 本人体験編」の無料配布が実施されているという。
ここまで、凸版印刷の4つの自治体DXを推進するソリューションを紹介してきたが、皆さんには凸版印刷が「印刷」だけの会社ではないことが伝わったのではないだろうか。さまざまなサービスに挑戦し、ジャンルを超えた活躍を見せる凸版印刷のDX推進に今後も注目したい。