早稲田大学(早大)、千葉工業大学(千葉工大)、岐阜大学、NEC、高速近接無線技術研究組合(HRCP)の5者は6月29日、海外の7つの研究機関と共同で、300GHz帯を活用した双方向リアルタイム伝送実験に成功したことを発表した。

同成果は、早大理工学術院の川西哲也教授、千葉工大 情報通信システム工学科の枚田明彦教授、岐阜大工学部の久武信太郎准教授、NEC ワイヤレストランスポート開発統括部の佐々木英作上席プロフェッショナル、HRCPの近藤啓太郎氏らのほか、独・ブラウンシュヴァイク工科大学、独・フラウンホーファー応用固体物理研究所、独・シュツットガルト大学、独/チェコ・ドイツテレコム、仏・リール大学、イスラエル・Siklu Communications、英・VIVID Componentsの研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。

今回の研究成果は欧州委員会のHorizon2020、および情報通信研究機構の委託研究「大容量アプリケーション向けテラヘルツエンドトゥーエンド無線システムの開発(ThoR:TeraHertz end-to-end wireless system ssupporting ultra high data Rate applications)」(研究期間:2018年7月1日~2022年6月30日)の一環として実施され、ブラウンシュヴァイク工科大で6月29・30日にハイブリッド形式で開催されているThoRプロジェクトの最終ワークショップにて、実験デモンストレーションおよび研究成果の紹介が行われる予定だという。

移動通信システムの基地局を接続するためのネットワークにおいて、従来のシステムでは光ファイバが一般的に用いられてきたが、将来の移動通信ネットワークであるBeyond 5G/6Gシステムでは莫大な数の基地局が必要となるため、その一部を高速テラヘルツ無線が担うことが期待されている。

そこで国際共同研究チームは今回、300GHz帯での双方向通信で実際のネットワークに接続可能な無線伝送装置の動作実証を行うことにしたという。実験は、ブラウンシュヴァイク工科大構内において、伝送距離160mにて行われた。

  • 双方向テラヘルツ無線装置

    ブラウンシュヴァイク工科大の構内建物屋上に設置された、実データ伝送可能な双方向テラヘルツ無線装置 (画像はブラウンシュヴァイク工科大 トーマス・キュルナー教授から提供されたもの) (出所:早大プレスリリースPDF)

今回開発された無線伝送装置は8.64GHz×2の帯域幅を用いて、伝送速度20Gb/s×2(双方向)に対応したものであり、帯域幅の拡張により、さらなる高速化も可能だという。また、通信規格IEEE802.15.3に準拠した信号形式での伝送実験にも成功したともしており、これらの結果は、Beyond 5G/6Gネットワークへのテラヘルツ通信の適用可能性を示したものとしている。

  • 双方向テラヘルツ無線装置

    双方向テラヘルツ無線装置を別角度から撮影したもの (画像はブラウンシュヴァイク工科大 トーマス・キュルナー教授から提供されたもの) (出所:早大プレスリリースPDF)

なお、早大、千葉工大、岐阜大はThoRプロジェクトの成果をベースとして日欧連携をさらに発展させ、テラヘルツ通信を用いたネットワーク実現を目指したNICTの委託研究「欧州との連携による300GHzテラヘルツネットワークの研究開発」を2021年度から実施中で、長期にわたり屋外で動作させることが可能な小型のテラヘルツ無線伝送装置の開発を進めているとする。また、複数のテラヘルツ無線伝送装置を連携させ、悪天候時にもおいても安定的な高速データ伝送を可能とする技術を開発することも計画しているという。