セールスフォース・ジャパンは6月15日、「Salesforce」パートナーとの今後のアライアンス戦略に関するオンライン記者発表会を開催した。発表会では、「パートナーのビジネス成長」と「パートナーエコシステムの拡大・強化」に注力する方針が示された。
パートナーのビジネス成長においては、「Salesforce Customer 360」とその関連製品の機能を理解し課題を解決できるだけの「製品知識」と、製品ユーザーの理解や課題発見ができる「実践力」の2本柱で支援策を拡充する。パートナーエコシステムの拡大・強化にあたっては、製品ユーザーのDX(デジタルトランスフォーメーション)支援につながる取り組みを複数展開する。
これまでも、同社ではSalesforceの導入支援パートナーだけでなく、Salesforceのマーケットプレイス「AppExchange」でビジネスアプリを提供するパートナーに対してもトレーニング、キャリアチェンジ支援、案件創出支援、営業力強化などの支援プログラムを提供している。
セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 アライアンス事業統括本部 統括本部長の浦野敦資氏は、「グローバルはもとより、日本においてもSalesforce Customer 360を中心に当社製品を複数組み合わせて利用するユーザーが増えている。そうした中で、ユーザーの顧客接点改革を通じたカスタマーサクセス実現には、パートナーの力が必要だ」と述べた。
パートナーエコシステムの拡大に向けて、今後は「DXの担い手を増やす」「高度DX人材を育成する」「スキルと実績を見える化する」の3点に注力する。
DXの担い手を増やすために、今後は非IT人材をSalesforce導入コンサルタントとして育成する「Pathfinder」を拡充する。2021年度は100名募集したが、今年度は1000名を対象とする。また、トレーニング期間も18週から21週に増やす。
加えて、「Salesforce地域パートナープログラム」を新たに開始する。同プログラムでは地域発のSalesforce導入の成功事例を全国のユーザーと共有することを目的に、パートナー、ユーザー、地域金融機関、地方自治体、大学などと提携し、地域に根差したエコシステムグループを立ち上げる。成功事例のコンテンツ化のほかパートナーの地元イベントへの出店支援、マーケティング支援、各地域でニーズの高い製品のトレーニング強化などを実施する予定だ。
セールスフォース・ジャパン アライアンス事業統括本部 パートナーエコシステム本部 本部長の原田考多氏は、「Pathfinderでは、育成だけでなく就業支援まで無償で実施する。今年度は44社のパートナーからプログラム受講者の就業機会創出に賛同を得ており、その中には地方に拠点を構えるパートナーも含まれている。地域パートナープログラムと併せて、リモートワークやUターン・Iターンの就業機会創出につなげたいと考えている」と語った。
高度DX人材の育成のうち、製品知識の習得支援では製品トレーニングプログラムのオンデマンド提供を強化する。現在、74講座が提供されているが、2023年1月末までに150講座まで増やす予定だ。Tableau、MuleSoft、Slackなどの最新製品の講座も提供開始予定だ。また、最新製品のスキルの対外的な証明が可能な新資格制度「Accredited Professional」を設立し、資格取得のための試験も日本語で提供する。2022年6月から試験を無償で受験できるバウチャー(クーポン)も600名に提供する。
一方、パートナーの実践力向上に向けて、Salesforceの導入プロジェクトのPM(プロジェクトマネージャ―)向けのトレーニングも拡充させる。従来は、SalesforceのPMに求められる要素が具体的に定義されていなかったが、今回、5つの要素を定義した。今後は各要素を身に付けるためのトレーニングプログラムを順次公開していく。
スキルと実績の見える化では、パートナーの製品・業界ごとのスキルや実績を証明する「Navigator Program」を本格展開する。同プログラムでは、認定資格や顧客満足度アンケートの件数・点数を基にパートナーの知識・経験・品質を測り、3つのグレードのいずれかの「Navigator」認定を行うもので、パートナー400社のうち現在は57社が取得している。今後は取得企業数を増やすためのサポートを行い、Navigator取得企業に関する対外的な情報発信も強化するという。
このほか、AppExchangeパートナーとの戦略的OEMアライアンスも紹介された。セールスフォース・ジャパンは今後、非IT企業による業種・規模特化型のアプリケーション開発とAppExchangeを通じた外販を促進させる方針だ。
発表会では、Salesforceプラットフォームを活用して、中小企業向けフィールドサービス管理SaaS(Software as a Service)を提供している米Ford社の事例のほか、日本企業のOEMアライアンス事例も紹介された。
セールスフォース・ジャパン 執行役員 AppExchange事業&アライアンス推進本部 兼 韓国アライアンスの池谷充弘氏は、「日本でもすでに、Salesforce導入した非IT企業が自社での活用ノウハウをパッケージ化して外販する事例が出てきている。顧客基盤とノウハウを持ち、ITを活用した新規事業創出を検討している企業との協業を進め、Salesforceプラットフォームを活用したソリューションを開発・提供することでDXを推進したい」と語った。