日本ディープラーニング協会(JDLA)は6月1日、「ベネッセが進めるデジタル人材育成戦略 〜Udemyの有効活用法教えます!〜」と題したウェビナー「人材育成 for DX」を開催した。
同ウェビナーはJDLAが主催する企業向けの人材育成セミナーであり、毎回さまざまな企業のゲストを迎えて各社の取り組みを紹介している。今回のセミナーは、ベネッセコーポレーションの人財開発部に所属する北村洋子氏による、同社のDX人材育成の事例紹介から幕を開けた。
同社では経営直轄の組織として、グループ横断的にDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するDIP(Digital Innovation Partners)を設置している。これによってグループ各事業におけるDXを推進しているという。この組織は主にDX戦略のモニタリングやリソースの全体最適化、DXコンサルティング、DX人材開発や採用などを行っている。
同社はDX人材の育成に際して、まずは「ベネッセのDXに必要な7職種」を定義している。企画、BPR(Business Process Re-engineering)、PMO(Project Management Office)、開発管理、エンジニア、デジタルマーケ、データ職種がこれに相当するという。
続いて、各職種に対しスキルマップを作成し、職種ごとに要求されるスキルを具体化している。以前は漠然としていた職種ごとの定義を明文化することで、必要なスキルを客観視できるようになったとのことだ。
さらに同社は、自社ならではのスキルマップと社外の市場価値を照らし合わせて、客観性を担保するアセスメントも実施している。社員は社内だけでなく市場内における自身の価値を確認できるようになる利点がある。
各人の情報はタレントマネジメントシステムによって管理され、全社レベルで可視化できるため、人材育成や採用戦略、人材配置にも役立てられているようだ。
実際に人材育成を行うための研修にあたっては、自社の具体例を活用したオリジナルのプログラムを作成したという。基礎的なITの知識については、オンライン学習プラットフォームであるUdemyを活用したとのことだ。
北村氏は具体的な研修の内容も紹介していた。デジタル基礎研修では、業務上必要になるデジタル技術の知識や世の中のデジタルサービスの動向、グループ会社内のDX事例の共有などを学ぶという。カオスマップを利用した俯瞰的な業界地図の理解に加えて、個別のサービスに見られる工夫を学ぶ機会もあるそうだ。経験談や事例を交えて解説することで、理解を促す。
デジタル企画職向けの研修では、開発現場を理解するプログラムを提供している。アジャイル開発やウォーターフォール開発のプロセスを知るだけではなく、ウォーターフォール開発における要件定義のポイントを体系的に学べる。これまで属人的に行われていた要件定義を事例を交えながら体系立てることで、プロセスの進め方やツールの使い方などを実践的に学べる研修となっているようだ。
このように、同社のDX人材育成研修には共通して、業界全体で知っておくべき形式的な知識と、明日にでも手元の作業に活用できる具体的な知識を同時に提供するという特徴がある。基礎的な知識と日常の業務が有機的につながることを狙っているのだという。
ベネッセのDX研修に見られる一貫した構想は「一人一人の主体的な学びを支援する」点にあると言えるだろう。企業として学びを強制するのではなく、あくまで機会提供と支援にとどめ、社員の自らの学びが主体となるための仕組みを構築している。
社員の学びを支援する同社のユニークな取り組みの一つに、今年度から制度化したという「リスキル休暇」がある。同制度では、学習を目的とした休暇を3日間付与し、リスキリングのために会社のPC端末や研修システムを利用できるとのことだ。
そのほか、産休または育休中にもキャリア形成を止めないための取り組みとして、オンラインで自身のキャリアを考えるための勉強会や交流会を催している。おすすめのUdemy講座を共有する機会としても利用されているという。