東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は5月26日、宇宙線と大気中の原子核との衝突による「磁気単極子(モノポール)」の生成断面積を推定することにより、これまでの宇宙線観測と加速器実験でのモノポール探索の結果を直接比較することができるようにしたことを発表した。

同成果は、Kavli IPMUのウラジーミル・タキストフ特任研究員/Kavli IPMUフェロー、独・カールスルーエ工科大学 理論素粒子物理学研究所の井黒就平 博士研究員、米・ケンタッキー大学 物理学・天文学科のライアン・プラスティッド博士研究員らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。

磁石はどこまで細かく分割しても必ずN極とS極からなり、N極だけもしくはS極だけの磁石は見つかっていない。しかし、約150年前にジェームズ・マクスウェルが生み出した古典電磁気学を記述するマクスウェル方程式は電磁双対性と呼ばれ、それを電荷を持つ粒子に適用すると、その粒子はN極かS極の片方のみを持つ粒子になることが理論的に導き出された。

また、1930年代にはポール・ディラックが量子化された磁荷を持つモノポールの存在を提唱。現在まで90年以上の時間をかけて、多くの科学者がそれを探し求めてきたが、いまだに発見されていない。

そうした中、研究チームは今回、新たな視点からモノポールの研究を進めることにしたという。特に注目したのが、従来の加速器でも生成可能な、電弱スケール程度の質量を持つ軽いモノポールだという。軽いモノポールは、大気との衝突で生成されて地上に降り注ぐと推測されており、初期宇宙で生成され現在まで残っていると期待されているモノポールとは異なるもので、質量に関する推測が広い範囲にわたっていることが特徴とされている。

この軽いモノポールを対象とすることで、LHC加速器実験で行われているのと同様のシミュレーションを宇宙線と大気中の窒素や酸素などの原子核との衝突現象に用い、軽いモノポールが地球上の観測装置に降り注ぐ強度を推定することにしたとする。