東京工業大学(東工大)と科学技術振興機構(JST)は5月16日、鉄さびの主成分であるα型酸水酸化鉄「α-FeOOH」からなる固体触媒を開発し、CO2から水素のキャリア物質であるギ酸を高選択率で得ることに成功したと発表した。
同成果は、東工大 理学院 化学系の前田和彦教授、西岡駿太特任助教、安大賢大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、独化学会の刊行する公式学術誌のインターナショナル版「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された。
環境問題の観点から、光エネルギーから化学エネルギーへの高効率変換を実現する光触媒(=人工光合成)系の研究に力が入れられている。その開発に向けた取り組みにおいて、CO2を変換して有用物質を得る固体触媒の開発は特に重要な課題とされている。
CO2変換の固体触媒としては、これまでは銀やコバルト(そのほか貴金属や希少金属)などからなるナノ粒子が用いられてきたが、資源制約も重要視されていることから、そうした希少資源を利用しない材料での開発が切望されているほか、「欲しいものを作り分ける」という選択率の制御の観点でも、開発の余地が多く残されていたという。
鉄系の酸水酸化物および酸化物は典型的な土壌鉱物であり、地球環境における炭素循環の反応点の1つでもある。特にα型酸水酸化鉄α-FeOOHは鉄さびの主成分として、馴染み深い物質として知られている。
研究チームはこうした鉄系の土壌鉱物がCO2吸着能力を有する点に着目して、α-FeOOHを基盤とした固体触媒の開発を進めてきたという。