島津製作所は4月25日、160kVの高出力CT装置として世界最小・最軽量クラスを実現した卓上X線CTシステム「XSeeker 8000」の発売を発表した。
X線CTシステムは、X線の発生装置と検出器の間で回転する対象物の透視画像を処理することで、対象物内部を3次元で観察・透視する装置で、製造現場における非破壊検査といったシーンなどで活用される。
X線検査装置のメインターゲットである輸送機市場は、コロナ禍により落ち込んだものの2022年以降は回復していく見通しで、中でもアジア市場は、アルミニウムや樹脂成型品などの軽量素材において成長を続ける中国とインドを中心に右肩上がりとなっている。
そのアジア市場ではX線検査装置の平均単価が他地域と比べ1000万円以上安価であり、普及価格帯の装置が多く導入される傾向にあるという。また日本国内でも高額CTの補助的役割や複数台利用のために安価なCTの導入が進んでいて、導入へのハードルが低い低価格帯の装置に対する需要が存在すると推測されるという。
そのため、今回、高価なCTの開発で得たノウハウを活かした高品質かつ低価格で導入へのハードルが低いCT装置の開発が進められたとのことだ。
XSeeker 8000は、160kVの高出力CT装置ながら、大きさ(横幅893mm×奥行き650mm×高さ526mm)、重さ(290kg)ともに世界最小クラスを実現したことで、卓上にも設置が可能。国内最小規格のエレベータにも搭載可能(同社調べ)で、装置の搬入についてもハードルが低いとしている。
島津製作所の分析計測事業部 NDIビジネスユニット 製品開発グループ主任の原田大輔氏によると、同製品は「誰でもすぐ検査」を実現することがコンセプトで、「コンパクトでありながら高出力」、「クラスを超えた高画質と高機能」、「検査業務に適した操作性」という3つの特長があるという。
「コンパクトでありながら高出力」の部分では、机に乗るコンパクトなサイズでありながら160kVという高出力X線発生装置を搭載しており、X線が透過しにくい肉厚な樹脂部品やアルミダイカスト部品をはじめとした金属部品でも、微細な観察が可能だとした。
また「クラスを超えた高画質と高機能」の部分では、最大560万画素の高い入力解像度と微細画素検出器の搭載による高精細撮影を実現。またCTデータのビューアーには3D表示機能が搭載され、より直感的な観察を可能とした。撮影データは、3D CADでの読み込みや3Dプリンタでの出力などの用途にも活用できるメッシュデータにも変換が可能だという。
さらに「検査業務に適した操作性」の部分では、LED光源を利用した影絵による撮影可能領域の可視化、対象の材質と画質をそれぞれ2択から選ぶだけで撮影が可能となる撮影条件の簡単設定機能などにより、初めてCT装置を操作する場合でもすぐ撮影できる仕様となっている。
CTの撮影時間は最短12秒で、3Dデータを出力する再構成演算も約10秒で完了するため、短時間での撮影が可能。また同じ型の撮影対象であれば、ソフトウェアを操作せずボタンをワンプッシュするだけで繰り返しの検査が可能であるため、ロット品の検査にも利用できるという。
なお、希望販売価格は1800万円(ソフトウェア込み、税別)からで、発売から1年間で国内外合わせて100台の販売、そのうち5~6割を海外で販売することを目指しているという。