デロイトトーマツミック経済研究所は4月20日、5G基地局市場の予測と2021年度のモバイルキャリア各社の戦略にかんするレポートを発表した。同レポートでは実績についてはモバイルキャリア4社への調査をベースに数字を積み上げて市場規模を推計。また現状の5G基地局の展開状況も踏まえて5G基地局の今後の市場動向を予測した。
モバイルキャリア4社の設備投資の総額は、2020年度で1兆8,420億円。楽天モバイルの設備投資の前倒し効果により予想よりも大幅に増加した。2021年度も楽天モバイルの高い設備投資が続き、2兆円弱の見通しという。しかし、楽天効果が一段落する2022年度以降は、設備投資総額は減少に転じ、2024年度には1兆5,700億円程度に落ち着くと同社は予測。
2020年度の基地局を中心とする5G投資総額は、全設備投資額の16%を占める3,000億円弱だが、2021年度には同30%で5,870億円に達して、4G投資を逆転する見込みだ。また、2022~2026年度の5年間の累積では、4社の設備投資額は、約8兆円に達するといい、そのうち5Gの新規帯域向けの投資額は、37%を占める3兆円弱程度と同社は見込む。
各キャリア別に見ると、ドコモが設備投資額の44%を5Gの新規帯域向け基地局に割り当てるのに対して、KDDI、ソフトバンクはそれぞれ31%、27%程度にとどまる。KDDIとソフトバンクは、ドコモより5Gの新規帯域への投資額が少ない分、既存の4Gから5Gへの移行投資に振り分けられるとのこと。
4Gを5Gで巻き取るには、古い4Gの無線機はハードごとの交換が必要だが、比較的新しい無線機はソフトウェアの入れ替えだけなので、低コストで5G化が可能。また、一部にはDSS技術(動的に波長分布を分け合う技術)を活用して4Gと5Gを使い分ける手法も採用されているとのことだ。
また、5Gの展開の中でO-RANと基地局シェアリングという新しい動きが出てきた。これらは、基地局の無線機ベンダのシェアに大きな影響を及ぼすと予想されている。ドコモと楽天モバイルが採用しているO-RANは従来のDU(Distributed Unit)/RU(Radio Unit)間のベンダロックを解放する。
これによって通信キャリアは通信機ベンダの選択肢が大幅に増え、O-RANに注力している日本の通信機ベンダ復活の可能性も出てきたとのこと。もう一つの基地局シェアリングについては、エリクソン、ノキアといった海外の通信機ベンダのシェアに影響すると同社は指摘する。