京都大学(京大)と熊本大学(熊本大)は4月15日、他者が発する動作音や物音の聴覚空間情報が、他者が「そこにいる」感覚(実在感、ソーシャル・プレゼンス)を生み出す上で大きな役割を果たすことを明らかにしたと発表した。
同成果は、京大大学院 工学研究科の切通在菜大学院生、大谷真准教授、熊本大大学院 人文社会科学研究部の寺本渉教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
現状、遠隔コミュニケーションシステムやVR環境でのコミュニケーションの質は、まだ実環境には及んでいない。その原因の1つとして、他者が「そこにいる」感覚(実在感)が十分に得られないことにあると考えられている。音響的・聴覚的な観点から見れば、他者が発する音をユーザが聴取する際に、他者がどこにいるのか、他者の音がどこから聞こえてくるのか、という空間情報が実在感に影響を与えることが推測されるとするが、そのような他者が発する音の空間情報が、視覚的手がかりがない状況においても他者が「そこにいる」と確信させるのに十分な効果を持つかは不明だったという。
そこで研究チームは今回、他者が「そこにいる」感覚をヒトが認識している場合に生じる行動学的変容である「社会的サイモン効果」(SSE)を実在感の行動学的指標として心理物理実験を行うことで、他者の存在に関わる聴覚空間情報による実在感への寄与を明らかにすることを試みることにしたという。