セールスフォース・ジャパンは4月13日・14日、「Salesforce LIVE: Japan Service Change Makers 一度の機会から生涯のお付き合いへつなぐ至高のサービス体験」を開催した。

14日の講演では、「お客様の期待の一歩先を実現する中小企業の顧客接点改革」をテーマにatsumel代表取締役の鳥居 儀彰氏が登壇し、根強いアナログ文化が残る不動産業界において、営業・マーケティング・カスタマーサポートを横断したデジタル化を推進して顧客接点を改革した自社の取り組みを紹介した。本稿では、鳥居氏の講演の模様をお届けしよう。

  • atsumel 代表取締役 鳥居儀彰氏

通期赤字、新卒の20%が半年で離職していた11年前

atsumelは、アナログな企業が多い不動産業界では珍しく、積極的に社内のIT化を進める企業だ。しかし、鳥居氏が入社した11年前までは、社内のITツールはメールとMicrosoft Excelのみで、社内のことを誰も把握できていない、かつ、通期で赤字を出すような企業だったという。

「2011年の新卒は13名入社したものの、半年で3名が辞めていきました」と、鳥居氏は当時を振り返る。そこで、鳥居氏は自社の未来に不安を感じ、働きやすい社内環境を構築するため、業績を上げるため、顧客のために「社内の見える化」の徹底に乗り出したのだという。

4ステップで実現した「社内の見える化」

ステップ1として初めに取り組んだのは、「未入力は罪である」という認識の徹底だった。

あらゆる情報を見える化するため、Microsoft Excelの利用は禁止し、データはすべてSalesforce.comに入力することにした。データを入力しないメンバーはマネージャーが厳しく取り締まるなどして、情報入力に関しての明確なルールを設定した。その結果、あらゆる商談の進捗や課題が浮き彫りになり、営業利益が大幅にアップし、1年で赤字を脱出したとのことだ。

  • STEP1

ステップ2として、次に行ったのは、Web集客への大転換だった。鳥居氏によると、2012年~2013年にかけて、それまで主流だった宣伝方法であるチラシを減らし、Web集客に集中するようになったとのことだ。

しかし、不動産業界はリアルで人と会わなくては業績につながりにくい仕事でもあるため、リアルでも会えるようにインサイドセールスの稼働を開始したほか、Salesforce.comと一体型のマーケティングオートメーションツール「Pardot」の導入も行ったそうだ。

  • STEP2

3ステップ目に行ったのは、「成約顧客とデジタルの接点を持つ」ことだった。 顧客を入れたChatterグループを作成し、そこに現場で建物ができていく様子を撮影して送ることにした。その結果、工事現場と顧客の状況の見える化が実現し、顧客との「言った言わない」などのトラブルが回避されただけでなく、顧客満足度も上がり、パフォーマンスの向上につながったという。

  • STEP3

そして4つ目のステップとして行っているのが、顧客に対し、1回目の取引で満足してもらうだけでなく、「リピーターになってもらう」ための施策だ。そのために、物件を引き渡した後、媒介契約後の顧客のためのポータルサイトを作成し、アフターフォローをきちんとデジタルで完結するようになっているという。

通常、アプリ化には初期費用と月額費用がかかるが、atsumelではSalesforceを活用してポータルサイトを構築したことで、こうした経費を省くことができたとのことだ。

  • STEP4

今回のイベントのメインテーマにちなみ「あなたにとってのサービスチェンジメーカーとは?」という質問がなされると、鳥居氏は「時代の変化をとらえ、デジタルと人を掛け合わせてお客様の期待の一歩先を実現する」と答え、講演を力強く締めくくった。