AMRRサイクルを用いた冷却システムの実現には、超伝導磁石の発熱や熱侵入を最小化する必要があるが、従来のパルスマグネット方式では発熱量が大きいため、今回の研究では磁場を変化させずに一定の超伝導磁石に磁性体を出し入れすることで発熱を抑えて磁場を変化させる機構が新たに開発されたとする。

  • AMRRサイクルを構成する4つの過程

    AMRRサイクルを構成する4つの過程 (出所:NIMSプレスリリースPDF)

また、可能な限り熱侵入を小さくするには、室温とAMRRの間には高効率な熱交換器を設置することが求められることとなるが、AMRRは一定間隔をおいて逆向きの流れを繰り返す特殊な流動特性を持つため、これに適した高効率な熱交換器を開発することは困難であったという。そこで、熱交換面積を最大化しつつAMRRに最適形状の熱交換器を新たに開発したほか、磁性体形状の改良なども行うことで、極低温で安定したAMRRサイクルを実現したという。

開発されたシステムは、上下2つの磁性体が、水素が流れ込む液化槽を挟む形になっており、磁性体を駆動するためのアクチュエータ、形状を最適化した熱交換器を含む熱交換ガス(ヘリウム)循環システム、および5Tの磁場を発生可能な超伝導磁石などで構成される。

磁性体には水素液化温度近傍で高い冷却効果を持つ「ホルミウムアルミニウム金属間化合物」(HoAl2)が選択され、容器に充填された。HoAl2は摩耗に弱く微粉化しやすいため、破砕紛をスタンプ状に加工して微紛化を防ぐ工夫も施されたという。

実際に、水素液化実験が行われたところ、実験開始からAMRRサイクルによる温度変動を繰り返しながら冷えていき、約20秒後に磁性体容器の低温端温度が水素液化温度(約20K)を下回り始め、65秒後には設置された3つの液面計の反応から水素の液化に成功したことが確認されたという。

  • 今回開発されたAMRRサイクルによる冷却システムの外観

    今回開発されたAMRRサイクルによる冷却システムの外観(左)、断面図(中央)、上下の磁性体と液化ステージおよび液面計の拡大図と磁性体HoAl2の画像(右)。液化ステージ内には液面計を配置した液化槽があり、水素は室温タンクからここに供給される (出所:NIMSプレスリリースPDF)

今回の成果を踏まえ研究チームは今後、磁性体移動速度を高速化して液化量を増大させることや、熱交換器を含む熱交換ガス循環システムの高効率化を進め、AMRRシステムの大型化を目指すとしており、液化効率50%、1日で100kg程度の液体水素を製造可能な水素液化機を実現することで、水素製造価格の低減につなげたいとしている。

  • AMRRによる水素の液化実験の一例

    AMRRによる水素の液化実験の一例。AMRRサイクル開始から約65秒で、一番下の液面計3の出力電圧が他の液面計の出力から離れ上昇している。その後、液面計2(中心)、液面計1(上部)の出力電力の上昇が続き、液面が上昇していることが示されている (出所:NIMSプレスリリースPDF)