LINEが本格的にNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)市場に参入する。同社の暗号資産事業およびブロックチェーン関連事業を展開するLVCが、NFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」の提供を2022年4月13日より開始する。これにより、1次販売から2次流通までの機能をLINE上で提供し、日本円での決済にも対応する。

まずは計17コンテンツと連携し、エンターテインメントやスポーツ、ゲームなどの7ジャンルで100種類以上のNFTを順次販売する。使い勝手を重視したプラットフォームを構築し、一部のユーザーだけでなく、幅広い年代向けに展開していく考えだ。

NFTとは代替できないトークンのこと。そのトークンとはブロックチェーン上で生成・保存されるデジタルデータのことで、代替性の有無によって定義や使い方が変わる。いわゆる「コピーできないデジタル所有証明書」で、現物のモノのように唯一性があり、デジタルデータのように劣化しない「デジタル上のモノ」とも言える。

  • NFTの概要

Twitterの共同創設者であるジャック・ドーシーCEOが最初のツイートをNFT化して販売し、それが約291万ドル(約3億1500万円)で落札されたことは世間を大きく騒がせた。

「NFTには3つの魅力がある」と、LVC 代表取締役社長 CEO 林仁奎氏は説明した。1つは、デジタルデータでありながら1点ものの所有ができること。また、2次流通などを通じて、所有情報の移転ができることも魅力の1つだ。NFTはブロックチェーン上で記録されるデータのため、ユーザー間で移動するコンテンツを追跡し、所有情報を正しく記録する。つまり、今、誰が、このデジタルデータを所有しているのかを証明することができるということだ。

そして最後の魅力が、コンテンツの移転などで発生する利益が永続的にコンテンツホルダーへ還元されることだ。「これらの技術の実現は既存のデジタル世界では難しかった。NFTはこれまでのビジネスモデルを革新する」と、林氏は断言する。

  • LVC 代表取締役社長 CEO 林仁奎氏

NFTの利用シーンは2種類ある。1つは、アートやトレーディングカードなどのコレクション型のコンテンツ。例えば、NBA選手の試合でのプレーのハイライトをNFTとして所有することができる「NBA Top Shot」は2020年10月の提供開始からわずか6カ月で約458億円の売上を達成した。もう1つは、ゲームやメタバース上で利用することができるアイテムなどの利用型のコンテンツだ。「所有するだけで特典が付くNFTもある。メタバース技術が日常にも浸透しつつあり、利用型のNFTは今後ますます増えるだろう」(林氏)

海外に目を向けると、NFT市場は爆発的な成長を遂げている。海外では2021年、コレクション型のNFT、利用型のNFTともに大流行し、2020年に約74億円だった取引規模は、2021年に約1兆5,400億円と約209倍成長した。LINEは、日本においても海外同様の成長を実現するため新サービスを開始する。

  • NFTのグローバル市場の爆発的な成長

同社は2018年にブロックチェーン事業に参入した。独自のブロックチェーン基盤「LINE Blokchain」を構築し、「LINK」という独自の暗号資産を活用してきた。LINE Blokchainは、すでに100万ユーザーを突破しており、NFTの発行数も190万を超えている。同社は試験的に「NFTマーケットβ」というNFTの取引所を運営してきたが、「LINK」のみの決済しか対応しておらず、2次流通(ユーザー間の取引)しか提供していなかった。

  • 「LINE NFT」の特徴

今回提供を開始する新しいNFTマーケット「LINE NFT」では、同社の決済サービス「LINE Pay」を使用した日本円決済に対応し、1次販売(購入)サービスを開始する。つまり、企業や個人事業主が行うNFTの発行や販売、ユーザーのコレクションやゲームなどのNFTの利用や、転売などの2次流通まで一貫して提供できるようになった。また、ユーザーもNFTの発行や販売が自由にできる。

  • 「LINE NFT」によるNFTの購入画面イメージ

ユーザーは、LINEで使用する「LINEスタンプ」でNFTを利用したり、プロフィール画像にNFTを設定したりできる。また、対象の商品を購入すると特典としてNFTが付与されるというサービスも展開する。まずはテレビ朝日や吉本興業、Jリーグなどの企業の連携し、エンターテインメントやスポーツ、ゲームなど7ジャンル100種類以上のNFTを提供する。

  • ローンチラインアップとして、計17コンテンツから7ジャンル100種類のコンテンツを用意

また、ソフトバンクグループやZホールディングスグループとも連携しさまざまな体験を提供していく。ソフトバンクとは、同社が提供する動画配信サービス「バスケットLIVE」において動画NFTの取り扱いを予定。また、同社のコンテンツ配信サービス「5G LAB」とも技術的な連携を進め、xR技術を活用した立体感・臨場感のあるNFTの検討を進める。NFT購入時の決済手段として「PayPay」の導入も検討する。さらにヤフーが運営するネットオークションサービス「ヤフオク!」との連携も進め、NFTを「ヤフオク!」で出品・落札できるように準備を進めているとのことだ。

LVC ブロックチェーン事業部 事業部長の上遠野大輔氏は、「現在NFTは、一部のユーザーに偏った盛り上がりをみせている。体験するまでに複雑な手順があり、NFTを保有する価値や意味の理解が進んでいないからだ。すべてのNFT体験を使い慣れている『LINE』で提供し、誰ひとり取り残さないNFTの世界を構築していく」と意気込みを見せた。

  • LVC ブロックチェーン事業部 事業部長 上遠野大輔氏