ワークデイは3月16日、新年度の事業戦略に関する記者説明会を開催した。エグゼクティブ・プレジデント兼日本担当ゼネラルマネージャー日本法人社長の正井拓己氏は、同社がターゲットとしているHCM(Human Capital Management)市場において、2022年に注目すべきトレンドとして「大退職時代の拡大」「労働力の最適化と自動化」「スキルギャップの解消」「職場変化に対応できるテクノロジー」を挙げた。

  • ワークデイ エグゼクティブ・プレジデント兼日本担当ゼネラルマネージャー日本法人社長 正井拓己氏

世界の動きと並び、日本でも人的資本管理のためのガイドライン作りの動きが活発化しているとして、「人材価値の開示に関するルールが定められる方向に向かっており、投資家からの圧力が高まることも考えられる」と正井氏は述べ、人材を企業の競争力の源泉として見なす機運が高まっていることを提示した。

正井氏は2021年の業績については、「順調に推移しており、好調だった。人員も20%以上増員して営業体制を強化するとともに、主要製品およびマーケティング施策への投資を加速した。あわせて、サービス業に特化したCPQ、ソリューションベンダーのZimitなど、買収も積極的に行った」と説明した。

また、日本市場の成長戦略の柱の一つに「財務・人事・プランニングを総合支援するプロバイダーへの転換」を据えていたが、Workdayファイナンシャル マネジメント(財務管理)の国内提供を開始し、Workdayアダプティブ プランニングの国内導入事例を多数展開したという。

マーケットの戦略としては「中規模企業市場への展開」を掲げていたが、中規模企業への販売体制を強化した。例えば、大規模企業および中規模企業向けの営業組織製品特化の営業部門、デジタルセールス部門などを新設した。加えて、新製品を担当するサービスチームも立ち上げた。

  • 2021年の日本市場における成果

続いて、正井氏は、「ソリューションの拡充」「顧客セグメントの拡大」「パートナービジネスの成長」という3つの柱から成る2022年の事業戦略について説明した。

第1の柱「ソリューションの拡充」については、「Workdayヒューマンキャピタルマネジメント(HCM)」「同アダプティブプランニング」「同ファイナンシャルマネジメント」にまたがる「エンタープライズマネジメントクラウド」を推進する。正井氏は、エンタープライズマネジメントクラウドの特徴について、「人材管理、財務管理、プランニングのための統一したプラットフォームを提供し、これらの情報を統合して意思決定することを実現する」と説明した。

  • 3つの製品領域から構成されるエンタープライズマネジメントクラウド

企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)をスピーディーに進める上で、ローコーディングに対する注目が高まっているが、「われわれは、以前から標準機能としてローコーディング基盤を提供している。そのため、Workdayでは、専門誌知己がなくてもコンフィグレーションレベルでフローを開発できる」と正井氏は語った。

主力製品のWorkday HCMについて、正井氏は「業務や機能の横の連携が強みであり、スキルベースでの人材戦略をとるうえでの武器となると考えている」と述べた。最近、提案が増えている先進機能としては、「ワークフォースプランニング(スキルベースで要員計画を可能にする)」「外部データ取り込み・分析」「拡張アプリ開発」があり、これらは今後訴求していくという。

2022年下半期には、社員からのフィードバックをリアルタイムで収集・分析できるインテリジェントリスニング プラットフォーム「Workday Peakon Employee Voice」のリリースが予定されている。同製品は、コロナ禍のリモートワークで注目されている従業員エンゲージメントを高めることに寄与する。

第2の柱「顧客セグメントの拡大」については、従来の大企業に加えて、中規模企業を積極的に攻めていく。中規模企業に資するWorkdayの価値としては、財務・人事・計画に必要なデータを一元的な管理・運用を実現すること、入社から育成、労務、評価など、従業員の一連のライフサイクルを網羅的にカバーできるようにすることがある。

第3の柱「パートナービジネスの成長」については、サービス・パートナーに当たるアクセンチュア、デロイト トーマツ、IBMとの関係強化に注力する。アクセンチュアとは、大規模企業向けのHCMビジネスの加速で連携し、デロイト トーマツとはHCMビジネスの営業活動強化とファイナンシャル・プランニング領域でのビジネス基盤確立を推進する。IBMとは、大企業HCM に加え、中規模企業向けのHCM、経営計画ビジネスの共同マーケティングと営業を強化する。

同日にWorkday HCMの本格導入を発表したトプコンからは、人事部課長の山田和人氏が「当社は、海外売上高比率は8割、約5000人のグループ社員を抱え、社員に占める外国籍の割合は70%に上る。個々の能力を引き出し、社員にさらに活躍してもらうために、グローバルでの適所適材を実現することが求められていた。今回、Workdayの導入により、そうした人財情報の⼀元管理が可能になる。AIをはじめとした機能のさらなる進化により、タイムリーに求めるデータ分析ができるインサイトの充実、ビジネスプロセスの変革による飛躍的な生産性向上など、当社の人事戦略実現の一翼を担うことを期待している」とのコメントを寄せた。