楽天グループ(楽天)と西友は3月10日、記者会見を開催し「楽天ポイント」を軸とするOMO(オンラインとオフラインの融合)戦略を発表した。両社はOMO戦略の新たな協業体制を2022年4月より本格展開する。西友店舗においてデジタルマーケティングの強化を推進し、オンラインとオフラインの垣根なく、新規顧客層の獲得および既存顧客の活性化を図る。

  • 西友全店舗で楽天の決済サービスのフルラインアップを利用可能に

具体的には、4月1日より西友の限定クレジットカードを発行する。同カードに付帯する電子マネー「楽天Edy」も「西友」などの実店舗で利用できるようになり、4月26日には現在の「楽天西友ネットスーパー」アプリに店舗でも使える機能を追加し、「楽天西友アプリ」として新たにリリースする。

  • 西友限定のクレジットカードを発行する

  • OMOを実現する「楽天西友アプリ」

同アプリは、「楽天西友ネットスーパー」と共通ポイントサービス「楽天ポイントカード」、スマホ決済サービス「楽天ペイ(アプリ決済)」の各機能を統合して提供し、ネットスーパーでも店舗でも使えるようになる。また「楽天ポイントカード」も4月26日より西友グループの全店舗で利用できる。

同会見に登壇した楽天 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は「昨今の新型コロナ禍の影響もあって食品のEC化が加速しており、スーパーマーケットはOMO時代に突入している。2020年の日本における食品のEC化率は3.3%と、世界の17.9%と比べて大きく遅れをとっているが、今まさに食品のEC化は超拡大前夜を迎えている」と語った。

  • 楽天 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏

両社は2018年10月より「楽天西友ネットスーパー」の協働運営を本格的に開始。同サービスは北海道から九州まで全国のユーザーに食料品、日用品、住居用品、衣料品を提供している。2021年の流通総額は約500億円と前年比26%で伸長し、同サービスにおける物流センターからの出荷流通総額は、前年比79%増と大きく伸長している。2024年には流通総額1000億円を前倒しで達成する見込みだ。

  • 「楽天西友ネットスーパー」事業の現状

現在、千葉県柏市、神奈川県港北区、大阪府茨木市の3カ所で物流センターを稼働しており、2023年には千葉県松戸市に新たに物流センターを新設する予定。この物流センターは、常温・冷蔵・冷凍の3温度帯で最大3万~4万アイテムを保管できるほか、搬送や保管などの自動化装備を導入している。三木谷氏も実際にこの物流センターを見学し「ついにここまで来たのか」と感嘆したという。

また同サービスは、物流センターからの出荷だけでなく店舗からの出荷も行っている。現在124店舗で実施しており、多くの店舗で黒字化を達成しているとのこと。

西友はこれまでに、楽天が提供する「楽天ペイ(アプリ決済)」(2020年12月導入)や、来店でポイントがもらえる「楽天チェック」(2021年11月導入)、レシート画像を送付するとポイントがもらえる「Rakuten Pasha」(2019年4月導入)のサービスを導入しており、OMOサービスの提供を進めてきた。また、ドローンや自動走行ロボットを活用した商品配送サービスの実証実験なども共同で取り組んでいる。

  • 両社が実施した自動走行ロボットを活用した商品配送サービスの実証実験(横須賀市)

今回、さらにデジタルマーケティングを強化するため、楽天のエコシステムすべてをサービスに適応させる。オンラインとオフラインを一つのIDでデータ統合することで、一貫性のある顧客コミュニケーションの実現を目指す。

  • 両社が目指すオンラインとオフラインの融合

西友代表取締役社長の大久保恒夫氏は、楽天との協業を強化する理由について、「楽天は圧倒的なユーザーID数を持ち、ネット化社会への対応に成功している。また、楽天が抱える若年層から高齢者までの幅広いユーザーを取り込むことで、顧客層の拡大につながる。システムなどに対する知見も豊富であり、西友の実店舗の顧客基盤と合わさることでより大きな経済圏を生み出せる」と説明した。

  • 西友代表取締役社長 大久保恒夫氏

両社は、西友店舗における楽天ポイントカードの利用者数の目標を、2022年中に500万人超、2025年までに700万人超としており、また、4月26日にリリースする「楽天西友アプリ」のダウンロード数に関しては、2022年中に120万超、2025年までに500万超を目指す。

大久保氏は、「2025年までに、ネットスーパーでナンバーワンになり、デジタルマーケティングにおいてもナンバーワンになり、そして食品スーパーでナンバーワンになることを目標に協業を進める」と語った。楽天は、他の事業者との連携も視野に入れて、西友との取り組みを進める方針だ。