東京・上野の国立科学博物館(科博)にて2022年2月19日~6月19日にかけて特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」が開催される。
太古の昔から人類は宝石を、その特異性から魔除けやお守り、地位や立場を示すシンボルとして用いてきた。また、科学技術の発達により、そのあり方や、加工技術などが変化してきた。同展は、そうした人類の発展と宝石の関わりを原石、歴史的な流れ、宝石としての認識の変遷、宝飾品の加工技術、そして粋を集めた宝飾品そのものといったさまざまな視点から楽しく学ぶことができる構成をとっている。
具体的には、「原石の誕生」「原石から宝石へ」「宝石の特性と多様性」「ジュエリーの技巧」「宝石の極み」の5章で構成。第1章の「原石の誕生」では、どういう環境条件の岩石にはどのような宝石が含まれているのか、といったことを知ることができるほか、高さ2.5mという巨大なアメシストドーム、ペリドットを含むパラサイト隕石などを見ることもできる。
第2章の「原石から宝石へ」は、宝石にはどのようなシェイプ(輪郭、いわゆる形状)があるのかといったことや、ブリリアントカットはどのように作られていくのかといった、原石がまさに宝石に変わるためにはどのような加工がなされているのか、ということを知ることができる。また、国立西洋美術館の「橋本コレクション」から、製作時期がわかる201点の指輪を年代順に並べることで、4000年におよぶ宝石のカットの変遷の歴史を知ることもできるようになっている。
第3章の「宝石の特性と多様性」は、ダイヤモンドやルビー、サファイアといった一般的によく知られている宝石以外にもさまざまな宝石があることを知ることができる。また、その構成もそれぞれの宝石を単に並べるのではなく、特徴ごとにまとめ、それぞれの宝石がどんな特性を有しているのかを知ることもできるようになっている。中でも、ブラックライト(紫外線)で光る石を見ることができるコーナーは、代表的なフローライト(蛍石)をはじめ、いろいろな石が発する不思議な光を楽しむことができ、一見の価値がある。
第4章の「ジュエリーの技巧」は、まさに宝石を宝飾品へと変えるための、宝石を貴金属でどのように留めるのか、といったことを実際の宝飾品を見ながら理解することができるようになっている。
そして第5章の「宝石の極み」は、古代エジプト時代の紀元前のアンティークから1900年代まで、幅広い年代の宝飾品コレクションを有するアルビオンアートの協力のもと、宝石的価値、宝飾品的価値、歴史的価値、どれをとっても珠玉といえる芸術作品群を間近で見ることができ、人類がいかに宝石の輝きを大切にしてきたかを知ることができるようになっている。
同展示会の監修者の1人、国立科学博物館 地学研究部 部長の宮脇律郎氏は、「宝石は日常ではなく、なにか“特別”な印象があるが、多くの人が“美しい”と共通認識を持っていると思う。そして、宝石のほとんどは地球が生み出したもの。宝石は、古くから人々の暮らしや気持ちを豊かにすることで、生活に寄り添ってきた。同展示会では宝石の美しさの秘訣を科学的にわかるように展示した。宝石の実物を見ながら、お気に入りのものを見つけていただけたら」と開催にあたってコメントを寄せた。
また、宮脇氏は同展の見どころについて、「例えば、宝石を色のバリエーションに沿って展示した“宝石色相環”は見どころの1つ。同じ宝石だけど、色が異なるものがあったり、違う宝石だけど色が同じものなどをまとめて展示している。見ていると同じ“輝き”でも、“柔らかい輝き”や“するどい輝き”があるのがわかる。美しさの中にも違いがあることが分かれば、もっと宝石を楽しめるのではないかと考えている。また、宝石は自然から生まれたものだが、人間の加工技術が加わり、文化的に親しまれてきたものだと思う。今回の展示では、そんなネイチャーとカルチャーの融合の結果としての宝石という面を紹介できればと考え、1~3章をどのように原石から宝石になるのかなどのネイチャーの部分、4、5章をジュエリーとしての宝石というカルチャーがわかるような展示に構成している。ぜひ楽しんでいただけたら」と語ってくれた。
ちなみに同展の音声ガイドは、ナビゲーターをカズレーザーさん、ナレーターを声優の早見沙織さんがそれぞれ担当。それぞれの章ごとの裏話や、宝石にまつわるクイズをカズレーザーさんと一緒に楽しむといったこともできる内容となっている。
また、タイアップとして、漫画家の二ノ宮知子先生が「Kiss」(講談社)で連載中の「七つ屋 志のぶの宝石匣」のコラボレーション企画となる書下ろしイラストも各コーナーで展示されている。
なお、お約束の最後の物販コーナーには、さまざまな石も販売。鉱物の状態のものから、宝飾品まで、さまざまな宝石が販売されている。ちなみに公式図録だが、現在、まだ販売の準備が整っておらず、予約を受け付ける方式が採用されている。予約者への発送は3月下旬を予定しており、同じ時期をめどに店頭にも並ぶ予定だという。
同特別展の開催概要ならびに注意事項は以下の通り。
- 会期:2022年2月19日~2022年6月19日(休館日は毎週月曜日(祝日の場合は翌火曜日が休館日。ただし3月28日、5月2日、6月13日は開館)
- 会場:国立科学博物館 地球館地下1階 特別展示室
- 入場料:一般・大学生:2000円、小中高校生:600円(未就学児ならびに障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料)。
- 入場する人は日時指定予約が必要。当日、科博にて当日券が販売される場合があるが、来場に時間がかかる場合や、販売枚数に限りがある場合があることに注意。