HubSpot Japanは2月16日、法人向けの商品やサービスの営業について、売り手と買い手の意識を調査した「日本の営業に関する意識・実態調査2022」の調査結果を発表した。同調査では、好ましいと感じる営業スタイルや営業組織のデジタル化状況、現状の課題などを聞いている。

同日に開催した記者説明会では、マーケティングチーム マネージャーの亀山將氏が、調査結果を解説した。

  • HubSpot Japan マーケティングチーム マネージャー 亀山將氏

亀山氏は今年で3回目となる同調査の目的について、「日本の営業組織の状況を定点観測するとともに、コロナ禍での各種制約が常態化した社会において、営業にまつわる意識にどのような変化があったかを明らかにするものだ」と説明した。

HubSpot Japanは今回の調査におけるポイントを3つ挙げている。

1つ目は、「好ましい営業スタイル」だ。売り手と買い手それぞれに「訪問営業とリモート営業のどちらが好ましいか(2021年12月時点)」を尋ねたところ、今回調査では前回調査と比較して売り手、買い手ともに訪問営業を好ましいと考えた人が増えた。だが、HubSpot Japanは、訪問営業とリモート営業の「どちらでもよい」と答えた買い手が38.4%と全体の4割にのぼり、前回調査時の26.5%と比較して約1.5倍に増加した点に注目する。

  • 「好ましい営業スタイル」についての調査結果、出所:「日本の営業に関する意識・実態調査2022」

「コロナ収束後の好ましい営業スタイルについての質問でも、『どちらでもよい』の回答が最多となったことから、『買い手』の営業に対する考え方が柔軟になっている」と亀山氏。

2つ目は、購買意思決定が重要視する要素だ。買い手に「ビジネスシーンにおいて、あなたはどのような印象を持つ会社のサービスや商品を購入したいと思いますか?」と、25の要素の中からランキング付与形式で尋ねたところ、1位が「信頼できる(33.6%)」となり、2位の「製品の品質が高い(30.1%)」や3位の「価格に見合う製品やサービスを提供している(27.6%)を上回る結果となった。

  • 購買意思決定における重要度が増した項目、出所:「日本の営業に関する意識・実態調査2022」

また、コロナ禍以前と比較した際に購買意思決定における重要度が増した項目を選択式(複数回答)で尋ねたところ、買い手の約半数(48.2%)が「信頼できる」という要素を選んだ。

3つ目は、営業組織における社員教育やマネジメント面の課題で、「従業員のモチベーション維持」と回答した人が最も多く(45.2%)、「1年前と比較した職場での精神状態」について、営業担当社の約4人に1人が「悪くなった」と回答したという。

  • 営業組織における社員教育やマネジメント面の課題、出所:「日本の営業に関する意識・実態調査2022」

また、メンタルヘルス向上への取り組みについては、経営者と営業現場に意識ギャップが存在する。「自分の会社が社員のメンタルヘルス向上のために積極的に取り組んでいるかどうか」という質問に対しては、売り手企業の経営者の48.7%が「そう思う」または「ややそう思う」と回答したのに対し、同様に回答した営業担当者は24.5%と経営者の2分の1に留まった。

取り組みの効果もそれほど高くない。「会社がメンタルヘルス向上のための取り組みを行っている」と答えた売り手に対して、取り組みがメンタルヘルス向上に繋がっていると思うかどうかを尋ねたところ、「そう思う」「ややそう思う」と答えた人は30.7%に留まった。

調査結果を受けて、シニアマーケティングディレクターの伊佐裕也氏は、調査結果の考察と具体的なアクションを提言した。その中でも、営業スタイルについて「訪問・リモートどちらでもよい」と答えた回答者が多かった点については、「相手の希望はこうだろうと決めつけず丁寧なヒアリングを行うこと」が重要だという。

  • HubSpot Japan シニアマーケティングディレクター 伊佐裕也氏

  • 調査結果の考察とHubSpot Japanが提案する具体的なアクション、出所:HubSpot Japan

「コロナ禍で変化が激しい中で、先週は訪問してほしかったけれど、今週はリモートが良いなどの希望が出てくることもある。相手が、いまこの時期に希望している商談の進め方を意識してヒアリングをすることが重要だ。顧客の繁忙期はオンライン、時間に余裕がある際は訪問と使い分けることも顧客への気遣いとなる。買う側の希望に応じて、訪問とリモートどちらにも対応できる柔軟性を高めておくことが顧客満足度の向上につながるのではないか」と伊佐氏は語った。

同調査では、日本の営業組織のデジタル化状況も調べている。調査回答者の59.6%はテレワークを導入しており、「電話・E メール・DM・ビデオ会議」などを用いたリモート営業は40.4%が導入、CRM(Customer Relationship Management)のためのシステムを導入している営業組織は34.8%となった。

HubSpot Japanは、営業組織が直面しているリモート営業ならではの悩みも調査対象者に聞いている。リモート営業の失敗談や悩みとしては、「相手側の感触がわからず失注が多発」「顧客企業の誰が参加しているかわからない」「和やかな雰囲気が作れない」など、の声が寄せられた。一方、「現場で足りないものを練り直し訓練しているため、失敗事例はほとんどない」というリモートスタイルに適用できている意見もあったという。

そのうえで亀山氏は、リモートならではのメリットを活用し、デメリットに対応するうえでの工夫のアイディアを紹介した。

「オンライン商談におけるストレスの多くは映像ではなく、音声に原因があると言われる。例えば、タイムラグが発生し、売り手と買い手の双方の発言のタイミングが重なってしまうことがあるが、そんな時は自分が発言した後、相手が発言・質問しやすくなるよう、意識的に3秒の間を置くと良い」(亀山氏)

  • オンライン商談における工夫のポイント、出所:HubSpot Japan

説明会の最後には、カントリーマネージャーの廣田達樹氏が事業の概況や今後の注力領域を発表した。

  • HubSpot Japan カントリーマネージャー 廣田達樹氏

廣田氏は、「HucSpotは非線形な事業成長を目指しているスケールアップ企業に向けて提供しているCRMプラットフォームだ。現状、当社の製品が最も価値を発揮できるのは、従業員規模が15名から2000名程度の企業となり、その中でも200名以上の規模の企業がより快適に活用できる機能の開発に注力している」と話した。

今後注力する領域としては、日本のユーザーからのニーズが高いアプリとの連携の加速や「スケールアップ」企業への販促活動の強化、また、スケールアップに求められる機能開発やコンテンツ(事例、eBook、ウェビナー)などの提供などを挙げた。

  • HubSpot Japanが今後注力する領域