パーソルキャリアは1月31日、20~59歳のビジネスパーソン1万5,000人を対象に調査した「職種別の残業時間」の調査結果を発表した。同調査によると、2021年4月~6月の3カ月の全職種の平均残業時間は月間20.8時間だった。前回調査(2020年4月~6月)の20.6時間とほぼ変わらない結果となった。

平均残業時間が少ない職種の上位には、事務/アシスタント系職種が並ぶ。TOP20には、11職種中10職種の同職種がランクインし、半数を占める結果に。この傾向はコロナ以前の2020年1月~3月、前回調査の2020年4月~6月でも同様に見られ、事務/アシスタント系の残業時間は全体的に安定して少ないことが分かる。

  • 平均残業時間が少ない職種TOP20 出典:パーソルキャリア

前回から最も平均残業時間が減ったのは「教育/スクール」で、19.2時間マイナスとなり、今回の調査では90職種中55位になった。教育現場ではICTの導入が進んでおり、これまで手作業で行っていた宿題やテストの作成、配布、回収、採点など一部業務のオンライン化で、業務の効率化が図られていることが要因と考えられる。

  • 前回から残業時間が減った職種TOP20 出典:パーソルキャリア

「教育/スクール」に次いで減ったのは、新型コロナの影響を最も受けた職種の1つ「調理/ホールスタッフ/フロアスタッフ」で、9.4時間マイナスだった。営業時間の短縮に加え、支払いのキャッシュレス化や食洗器の導などにより一部業務が自動化されたこと、フードデリバリーのニーズ増加による接客の省人化が進んだことが背景にあるだろう。

  • 平均残業時間が多い職種TOP20 出典:パーソルキャリア

一方で労働時間が長い職種TOP20には、インフラ整備や災害対策の需要が高まる「建築/土木系エンジニア」、ロボットやAI(人口知能)、自動化などの需要がさらに伸びている「モノづくり系エンジニア」が最多4職種ランクインした。

建築業界は、以前から慢性画的な労働力不足に陥っており、長時間労働者の割合が高い傾向にあります。耐震対策や建物の老朽化にともなうインフラ整備などのニーズが高まり続けているにも関わらず、手書き伝票などのアナログ業務がいまだに多く残っているため、残業時間が増えていると想定される。

しかし、「施工管理」は、TOP20内で残業時間が減った唯一の建築系の職種。クラウド型の施工管理システムの導入が広がっており、仕事のデジタル化が進みつつある。図面管理や業務連絡の一斉送信などがタブレット上で可能となり、事務所への移動時間や事務作業が削減。さらにタブレット端末などを通じた現場監督が可能となったこともあり、今回、残業時間が5.1時間減った。

前回から最も平均残業時間が増えたのは、「電機メーカーの営業」。

  • 前回から残業時間が増えた職種TOP20 出典:パーソルキャリア

この職種は、前回調査時には残業時間が少ない職種の20位だったが、世界的な「半導体不足」で残業時間が増加したと考えられる。新型コロナの影響や、それに伴うリモートワークの急激な普及や巣ごもり需要により、PCやテレビなど半導体関連商品の需要が急拡大し、供給体制のひっ迫が生じた。「電機メーカーの営業」はこれらのトラブル、高まり続けるニーズへのイレギュラー対応が発生し、残業時間が増加したと同社は推測している。