国内では、アサヒビール、アサヒ飲料、アサヒグループ食品の3社を主軸にビジネスを展開するアサヒグループホールディングス。コロナ禍で特に酒類の販売が苦戦するなか、データを活用した顧客中心志向への回帰を図る同社では、2020年4月に「Value Creation室」を新設し、飲食をコアとした新価値創造を目指す「Food as a Service構想」の実現、Valueを創る人材を増やす「VC人材育成プログラム」の推進、「グループ横断顧客データ分析基盤」の構築に取り組んでいる。
12月9日~10日に開催された「TECH+ EXPO 2021 Winter for データ活用 データが裏づける変革の礎」では、同社 日本統括本部 事業企画部 Value Creation室 シニアマネジャー 大江輝明氏が、今まさに進めている“DX=BX(ビジネス・トランスフォーメーション) ”について紹介した。
現場社員によるデータを用いた意思決定が当たり前になるように
アサヒグループでは、Asahi Value Creation戦略として「独創的なビジネスを創造・変革し、競争優位性を確保し深化をし続けること」を掲げている。そして、新たな事業と価値をつくり出すValue Creationを実現するには、データを使える状態に整備し、現場社員が日々当たり前のようにデータを活用して意思決定できるようにしていく必要がある。
その施策の1つが、伴走型分析支援の取り組みだ。理想は、ビジネス部門になるべく近い社員がデータ分析を行っている状態だが、現状では分析スキルを持つ人材が不足しているため、調査会社やコンサルティング会社など外部に委託することが通例となっているという。そこでまず同社は、JHQ(Japan headquarters)に分析組織を立ち上げ、各事業会社・部門に対して伴走型の分析支援を行うことで、グループ全体に分析のカルチャーを根付かせることを第一の目標に置いた。
「事業会社・部門のそれぞれに対して伴走し、人材が育成するにつれて各組織が自ら分析を行えるようにしていきたいと考えています。将来的には、JHQは経営判断に寄与する示唆を提供したり、ベストプラクティスを収集して横展開したりするCoE組織になっていくことを想定しています。状況によってそれぞれの役割がシフトしていくイメージです」(大江氏)
伴走型分析支援は、各部門の課題解決に向けて、手元のデータのうち使えそうなものを集めて整理し、課題解決に資するインサイトを見つけるところから始まる。そして、得られたインサイトに対するビジネスアクションの効果測定ができるようデータ分析の方法をデザインするところまでを行う。このサイクルを回すことで、分析のナレッジを現場にシェアし、最終的に自走できる状態にしていくことを目指す。
「内容の詳細はお伝えできませんが、まずは使えるデータの領域を広げ、その簡単な可視化からスタートしています。レポートや加工したデータは部門を超えてシェアし、インサイトが得られるような状態にしていくのです。将来的には、データ自体が収益を生んだり、顧客体験の向上にデータが使われたりするよう深化させたいと考えています」(大江氏)
人材育成も、Value Creationを実現するための重要な要素の1つである。特に長年、強いブランド力を武器に事業を展開してきたアサヒグループとしては、具体的なアクションを遂行できる人材が社内にどれだけの数存在しているのかが未知数だったという。
そこで、データ活用サービスなどを手掛けるブレインパッドの協力の下、アサヒグループに足りていない「ビジネス企画人材」「クリエイティブ人材」を育成するカリキュラムを作成。年齢・役職問わずグループ内から受講者を募集したところ、目標200名に対し500名以上の応募が集まった。