玉川大学は1月20日、2021年10月に約18カ月をかけて完成した脳科学研究拠点「Human Brain Science Hall(HBSH)」の竣工記念式典を開催した。

HBSHは、同大学の脳科学研究所の研究施設として学内に分散していたMRI実験室や心理実験室といった関連研究施設を統合し、「人間の本質の理解をめざす総合人間科学(ヒューマンサイエンス)研究拠点」として開設された。

同大学の脳科学研究所は、認知や動機付け、意思決定といった働きを担う動物の脳の基本原理を研究する「基礎脳科学研究センター」と心の発達研究や社会行動研究、心の哲学研究を行う「応用脳科学センター」から構成されており、2022年度からはロボティクス研究や人工知能研究などを行う「先端知能・ロボット研究センター」も脳科学研究所内に組み込まれ、さまざまな学問の融合による新しい心の科学の創成を目指すという。

その中でHBSHが見据えるのは「学内に分散されていた研究リソースを統合し、“研究”と“教育”、“学内”と“学外”、“学問”と“学問”をつなげていき、あらゆる分野の科学技術に関する知見を総合的に活用して社会の諸課題への対応を図ること」だという。

HBSHはL字型形状に作られており、最新の研究設備を整えた「研究ゾーン」、教員間の交流を促すため施設関係者の利用諸室を集約した「研究室ゾーン」、展示機能や研究者同士の交流の場となる「教育・交流ゾーン」に分かれている。

研究ゾーンとしては、1階にMRI実験室、2階に視線計測室や生化学解析室、3階には社会心理実験室や生理実験室などを備えている。

  • MRI実験室

    MRI実験室。MRIの内部にモニターが設置されているのでテスト中の脳の動きなどを調べることが可能

  • シミュレーション室

    1階にはMRIのシミュレーション室もある。これは、子供を対象とする際などに前もってMRIの音や狭さなどを体験してもらうためだという

  • 生理実験室

    2階の生理実験室。オキシトシンの計測などを行うという

  • 交流スペース

    研究者たちの交流スペースも備え付けられている

  • 社会心理実験室

    3階の社会心理実験室。行動実験を行うための個室が10個設けられている

  • 心理実験室

    3階の心理実験室。色が心理的に与える影響の実験用に照明の色が変更できる

玉川大学脳科学研究所は、文部科学省が認定する大学の枠を超えて共同研究を行うことができるシステム「文部科学省共同利用・共同研究拠点」にも選出されており、HBSHも玉川大学の各学部や国内外の研究機関との学外連携が行える「開かれた研究拠点」として各所と連携を進めていくという。