東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は1月18日、従来の超新星と異なり、急激に明るくなり超高輝度で輝く新しいタイプの超新星の爆発メカニズムを探るため、2つの超新星「AT 2018cow」(愛称:COW)と「SN 2018gep」(愛称:GEP)を対象に爆発の輝き方のモデル計算を行い、観測データとの比較から、どのような星がどのような進化と爆発をした結果、このような新しいタイプの超新星となるかを突き止めたと発表した。
同成果は、Kavli IPMUの野本憲一上級科学研究員、同・シン-チー・レオン特任研究員(現:カリフォルニア工科大学研究員)が組織した2つの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
2018年に、非常に明るく輝く超新星として観測されたCOWとGEPは、通常の超新星よりもピーク時の明るさが10倍から100倍という「超高輝度超新星」に匹敵する明るさであった上、通常の超新星と比較して明るくなるまでの時間が短く、明るくなってからの持続時間も短いことから、「FBOT(Fast Blue Optical Transients)」と呼ばれるタイプの超新星として分類された。
しかし、FBOTタイプがなぜこのような挙動を示すのか、またこの挙動がどのような星の進化・爆発によるものなのかは、これまでわかっていなかった。そこで今回、野本上級科学研究員らは2つの国際共同研究チームを組織し、COWとGEPそれぞれの爆発メカニズムについての研究を行うことにしたという。
観測データの分析によれば、COWはFBOTの中では最も明るい光度のピークを持ち、明るくなるまでの光度上昇の期間も約1日と最も短いことが判明。一方、GEPはCOWに比べてやや暗く、最も明るくなるまでの光度上昇の期間が約3日と長いことがわかった。その後、研究チームはこの2つの超新星の光度曲線のモデルの計算を行い、爆発に至る星の進化についての調査が行われた。
その結果、質量が太陽の80倍から140倍という巨大質量星が爆発直前に、その内部が非常に高温になったときに、電子・陽電子の対が生成されることで星が不安定になることで大規模な膨張と収縮を繰り返す脈動を生じ、その後、星の中心部が重力崩壊を起こすと、強い衝撃波が星と、星からの放出物「星周物質」の中を伝わっていくこととなる。密度の高い星周物質に取り囲まれた星全体の半径は、通常の超新星爆発前の星よりはるかに大きくなるが、衝撃波がそうした半径の大きな星周物質の表面に到達すると、その運動エネルギーが熱と光のエネルギーに変換されて、突発的に光度を大きく増し、超高輝度超新星として明るく輝くほか、星周物質は比較的早く膨張して密度を下げ、エネルギーを失うため、超新星は早い段階で通常程度の明るさとなって暗くなっていくとするメカニズムが提唱された。
,A@FBOTの明るさのメカニズム|
今回提唱された星の進化と爆発のモデルに基づいた光度曲線は、COWとGEPの実際の観測データとも高い一致が示されたとするほか、星周物質がない場合のモデルでは、光度曲線の立ち上がりが遅く、明るくなるまでの期間が長くなってしまうということも確認されたことから、FBOTの爆発メカニズムにおいて星周物質が深く関連していることが示されたとしている。
なお研究チームは現在、巨大質量星でパルス状に起きる脈動の大きさの違いが、星周物質の質量の違いを生み出し、それがFBOTの明るさの挙動のばらつきを生み出すのではないかと推測しており、今後、今回の仮説をより多くの観測データによって確認していくことで、同時に星周物質のほかの発生源についても探っていくとしている。