経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、グリーンイノベーション基金事業による温室効果ガスの排出削減支援事業として「製鉄プロセスでの水素活用プロジェクト」を始めると1月7日に公表した。

2021年度から2030年度までの10年間にわたって同プロジェクトを実施する計画で、予算総額は1,935億円になる見通しの大型プロジェクトだ。

同プロジェクトでは、製鉄所の高炉内で多くの水素ガス(H2)を利用する還元技術や直接還元炉で低品位の鉄鉱石を水素ガスによって水素還元する技術などをそれぞれ開発し、製鉄プロセス全体から炭素などの化石燃料の利用量を大幅に削減し、発生するCO2排出量を2030年までに50%以上減らす技術開発の実用化を目指す計画だ。

現在の製鉄所の高炉内ではコークス(C)からつくるCOなどを用いた還元反応によって鉄鋼石(主にFe2O3などの鉄酸化物)からFe溶融物をつくってきた。実際には複雑な反応群になっているが、これを大まかにまとめて書くと以下のようになる。

Fe2O3+3CO→2Fe+3CO2

NEDOはこれまでにもコークスの代わりに水素を使って鉄鉱石を還元する手法によって、CO2排出量を抑制し、さらにCO2を分離・回収することで製鉄所からのCO2排出量を約30%削減する技術の確立を目指した「環境調和型プロセス技術の開発/水素還元等プロセス技術の開発」(2017年度~2022年度)をすでに実施してきた。

この開発プロジェクトでは、「現在は試験高炉(容積12m3 、実高炉の約400分の1規模)での実証試験としてCO2排出量30%削減を可能とする技術の確立にめどを立てた段階まで達している」という。

この試験高炉で開発した技術を日本国内の製鉄所へ導入するには実際の高炉での技術検証が必要になり、さらに2050年カーボンニュートラルの実現にはさらに高炉からのCO2排出量を一層削減する必要がある。この実際の高炉への適用手法を今回のプロジェクトでは開発し、実際に実施する計画になっている。

今回発表した「製鉄プロセスでの水素活用プロジェクト」では、高炉を用いた水素還元技術の開発現状での技術課題として、これまでの「環境調和型プロセス技術の開発/水素還元などプロセス技術の開発」の試験高炉での開発成果を踏まえて、実高炉(5000m3 級)への改造を行い、常温水素系ガスの吹き込み試験の実施を目指す計画という。

また水素だけで低品位の鉄鉱石を還元する直接水素還元技術の開発も実施する計画だ。

  • テーマと担当企業

    「製鉄プロセスでの水素活用プロジェクト」の具体的なテーマとその担当企業(出典:NEDO)