バーミンガム大学と中国地球科学大学の科学者を中心とする研究チームは、中国南部の甘州市の白亜紀後期の岩石から歯のない獣脚竜(オヴィラプトロサウルス)の孵化する直前の胚を発見したことを発表した。

  • 発表論文

    今回発見されたオヴィラプトロサウルスの孵化する直前の胚(引用:発表論文An exquisitely preserved in-ovo theropod dinosaur embryo sheds light on avian-like prehatching postures)

研究チームは、この胚を「ベイビー・インリャン」と呼び、ベイビー・インリャンの姿勢が現代の鳥類の胚の姿勢に似ていることを指摘している。鳥類は、羽化する直前に、体を曲げて頭を翼の下に持ってくる姿勢をとることが知られており、このような姿勢をとれなかった胚は、孵化に失敗して死亡する確率が高くなるという。

これまで鳥類にしかないと考えられていたこのような孵化前の行動が、非鳥類獣脚類の間で生まれた可能性があることが今回の発見で判明した。

研究チームは、ベイビー・インリャンを他の獣脚類や首の長い竜脚類、鳥類の胚と比較することで、鳥類に特有の行動と考えられていた孵化前の行動が、数千万年から数億年前に獣脚類の恐竜で初めて進化したこという仮説をたて、この仮説をさらに検証するためには、胚の化石のさらなる発見が不可欠だとしている。

発見された胚は、化石化によって破壊されることなく、生活位置で関節が形成されており、研究チームの研究チームのエジンバラ大学のスティーブ・ブルサット教授は「この卵の中にある恐竜の胚は、私が今まで見た中で最も美しい化石の1つで、この小さな恐竜は、卵の中で丸まった鳥の赤ちゃんにそっくりで、現在の鳥に特徴的な多くの機能が、恐竜の祖先で初めて進化したことを示す新たな証拠だ」とコメントした。

なお、同研究結果はオープンアクセスの科学誌「iScience」で12月21日付で発表された。