富士通は12月14日、2021年7月から入居を開始し、ハイブリッドワークの実証も行う新オフィス「Fujitsu Uvance Kawasaki Tower」をメディア向けに公開した。
Fujitsu Uvance Kawasaki Towerは、同社が2021年10月に発表した新たな働き方のコンセプト「Work Life Shift 2.0」において、ハイブリッドワークを実証する場として紹介されている。
富士通の「Work Life Shift 2.0」のコンセプトを落とし込んだ新オフィス
同社では、2020年7月にニューノーマルの新たな働き方のコンセプトとして「Work Life Shift」を発表しており、従業員が主体的に最適な時間や場所を選択する働き方とすることで、オンラインワーク中心でも生産性やエンゲージメントの向上を実践してきたという。
富士通 総務本部 ワークスタイル戦略室 室長の赤松光哉氏は、Work Life Shiftの効果について「働き方が大きく変化した。出勤率は20%程度となっており、テレワークの徹底で月30時間の通勤時間が減少した。また、オフィスはリアルコミュニケーションの場として捉えているため、ソロワークやオンライン会議などは原則的に自宅、ないしは社外のシェアードオフィスを利用している。現在、シェアードオフィスは全国1300拠点で6万人が利用しており、月間の利用人数は7000人だ」と手応えを口にする。
そして、Work Life Shift 2.0はWork Life Shiftの振り返りも含めて策定した。オフィスの景色を変える取り組みやサテライトオフィスの社外への開放、オフィスにおける最先端テクノロジーの体験など「ハイブリッドワークの実践とエクスペリエンスプレイスへの進化」、スタートアップとのコラボレーション、自治体との地方創生といった「DX企業としての働き方改革」、男性育児参加100%の推進、ワーケーション/副業を推奨する「ワークとライフのシナジー追求」の3つの観点から取り組んでいる。
Fujitsu Uvance Kawasaki Towerは、2021年4月に竣工した地上28階、地下2階のJR川崎タワー4階~28階部分の6万9400平方メートルを賃借して整備。
入居部門は同社のSE部門などを中心とした富士通グループ13社、従業員数は1万3000人(2022年度中に1万8000人を予定)となる。ハイブリッドワークの中で出社率は3割程度としているため、実際の出社数は1日あたり5000~6000人を想定している。オフィスの4~10階、12階~19階、21階~24階がオフィス、25階~27階を同社の拠点内サテライトオフィスである「F3rd」とし、そのほかの階は食堂や大会議室、応接などを配置。
オフィス1フロアあたり、2650平方メートル、ワークポイント(無理なく執務できるスペース)は350、キャパシティは約1200人となる。
新オフィスは、Borderless Office(ボーダレスオフィス)として拠点・組織に縛られない環境を実現しており、特徴として挙げているのは「コラボレーションエリア」「ボーダレスな運用」「オフィスの景色を変える取り組み」「最先端テクノロジーの体験」「VISION WALL」の5点だ。
フロアの8割程度がコラボレーション用エリアとなっており、ミーティング用大型モニターホワイトボードを従来の4倍程度設置。
また、ボーダレスな運用を促進するため勤務地という概念を持たせず、オフィス内は完全ペーパーレスかつ個人の所持品はなく、郵便物の取り扱いも自宅やサテライトオフィスなど個人が選択できるようにしている。
最新テクノロジーなども駆使してハイブリッドワークを推進
さらに、オフィスの景色を変えるために経営陣によるタウンホールミーティングの開催や新人研修はオフィス内で実施し、F3rdの一部を社外向けに開放しているほか、オフィス内の位置情報管理や手のひら静脈認証の全面導入、さまざまなアプリの試行、新技術開発のためのラボを設けるなど、テクノロジーを体験できる。
具体的には、手のひら静脈認証はゲート入退や各フロアの入退、ロッカー、複合機、食堂精算、バーの会計など多岐にわたる。
同社の位置情報システムである「EXBOARD for Office」により、フロアごとの人数などオフィスを可視化しているほか、社内実証中の混雑状況確認ツール「こむ☆なび」は、混雑状況をアバターを用いた3D画像で表示している。
加えて、19人の若手アーティストが同社のパーパス(イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと)と川崎市をテーマに作成したVISION WALLと呼ぶ、アートが掛けられている。
赤松氏は「コロナ禍でオンライン環境が当社の予想を上回る形で充実してきたことに加え、従業員もオンラインによる業務にも慣れきたことから、Work Life Shift 2.0でオフィスの位置づけを再考した。現状の解としてはオフィスを従来のワークプレイスから、さまざまなイノベーションの源泉となるような体験を提供する“エクスペリエンスプレイス”(体験する場)に進化させていく。原則、現在はテレワークが主流であるもののアフターコロナを見据えて、リアルとオンラインを融合したハイブリッドワークを推進していく」と述べていた。