北海道大学(北大)は11月19日、電気スイッチ1つで絶縁体と超伝導体の切替えを繰り返し行うことに成功したことを発表した。
同成果は、北大 電子科学研究所の張習博士研究員、同・太田裕道教授らの研究チームによるもの。詳細は、材料と界面プロセスを題材とした学術誌「ACS Applied Materials & Interfaces」に掲載された。
高温超伝導体として知られるイットリウム・バリウム・銅複合酸化物「YBa2Cu3O7-δ(0≦δ≦1) (YBCO)」の超伝導転移温度Tcは、酸素欠損量δに依存することが知られている。δ=0におけるTcは約92K(約-181℃)だが、δ≦0.6になると超伝導転移を示さなくなり、δ=1に近づくにつれて絶縁体になることが知られている。
このため、酸素欠損量を変化させることで、超伝導体と絶縁体を切り替える新デバイスの実現につながると期待されているが、これまで提案されてきた酸素欠損量の調節方法は、いずれも応用上の問題があったという。
そこで研究チームは今回、イオン液体や電解液の代わりに、固体電解質である「イットリア安定化ジルコニア」(YSZ)を基板として、その上にYBCO薄膜を作製。その上で、空気中において300℃に加熱してその両端に電圧を印加することで、電気化学的にYBCO薄膜中の酸素欠損量を変化させることにしたという。
絶縁体を超伝導体にする場合には-10V、逆に超伝導体を絶縁体にする場合には+10Vを印加することで実現された。酸素欠陥量の制御は、保持時間の調節により行われ、δを0.069から0.87まで変化させることに成功したという。
δが0.069へと減少するのにしたがって、超伝導転移温度が上昇することが確認された一方、δが0.87になると温度低下に伴って電気抵抗が増加するという絶縁体の挙動が確認されたという。また、この絶縁体と高温超伝導体の切り替えは、繰り返して行うことが可能であることも確認されたという。
今回の成果を受けて、研究チームでは、電気スイッチ1つで、液体を一切用いることなく、絶縁体と高温超伝導体の間を繰り返し切り替えることを利用した新しいデバイスへの応用が期待されるとしている。