東京工業大学(東工大)は10月27日、植物由来のバイオプラスチックを肥料に変換するリサイクルシステムの開発に成功したことを発表した。
同成果は、同大 物質理工学院 応用化学系の阿部拓海 大学院生、同 青木大輔 助教(科学技術振興機構(JST)さきがけ研究者 兼務)、大塚英幸 教授、東京大学 大学院農学生命科学研究科の神谷岳洋 准教授、京都大学 大学院工学系研究科の沼田圭司 教授らによるもの。詳細は10月28日(現地時間)に王立化学会誌「Green Chemistry」に掲載される。
プラスチック(高分子材料)は、最終的に70%以上が廃棄され、材料のリサイクルは15%以下にとどまっているとされ、持続可能な社会の実現に向け、廃棄プラスチックのリサイクル率や、その効率向上が求められるようになっている。
今回、研究チームは、カーボネート結合を有するプラスチック(ポリカーボネート)がアンモニアと反応して、化学肥料である尿素に変換されることに着目。プラスチックをアンモニアで分解することで生じる「尿素」を肥料として利用して、植物の成長を促進させる、というリサイクルシステムの構築に向けた研究を進めることにしたという。
具体的には、再生可能な生物由来モノマーの1つで、植物由来原料であるグルコースを科学変換して得られる「イソソルビド」をモノマーに用いて、ポリイソソルビドカーボネート(PIC)を合成。
それをアンモニア水と反応させると、高分子が切られ、すべてのカーボネート結合が切られ、最終的には尿素になることが考えられたが、実験的にも24時間で高分子量体が消失することを確認。分解条件の探索を行ったところ、反応温度90度で、アンモニア濃度がカーボネート結合の30倍とすると最大化させることを見出したという。その結果、6時間でモノマーであるイソソルビド回収率97.4%、尿素回収率69.4%を達成できることを確認したという(一部は二酸化炭素となって放出)。
青木助教は今回の反応プロセスについて、「安価なアンモニアを用いるほか、有機溶媒ではなく水を温めるだけで触媒も不要であるといった簡便かつ環境にやさしい分解プロセスであるといえる」と説明する。
さらに、得られた尿素を使って植物の育成実験も実施。モデル植物でもあるシロイヌナズナにイソソルビドのみ、尿素のみ、プラスチックを分解して得られたイソソルビドと尿素の混合物の3条件で成長を比較。肥料として尿素が問題なく育つこと、分解生成物の方がよりよく育つことが確認されたことから、分解生成物そのものも肥料として有効である可能性が示されたとしている。
青木助教は、今回の成果について、今後のプラスチックを自分たちの手で作って、それを自分たちで分解して、そして肥料として地球に返していくことで、地球環境に配慮したプラスチック活用が可能になるとの期待を示しており、すでに改質剤として活用することで、透明性や機械的物性を変化させることもできる可能性も見えてきたという。そのため、今回のコンセプトが適用できるプラスチックの種類を増やせる可能性があるとしており、そうした改質したプラスチックでも、今回と同様の手法が適用可能な否かの調査などを進めていき、プラスチックを肥料へとリサイクルし、二酸化炭素を排出しないシステムの実用化を目指すとしている。