製造、食品、農業、医療、これらの業種に限らず最高の品質を提供、もしくは保持するためには、「定温」管理は非常に重要な要素の1つとなる。中でも生鮮食品や酒類、薬品、半導体などの精密部品では特に注意が必要とされる。だが、生産や加工の段階から出荷までのプロセスは管理できても、流通から消費者の手に渡るまでのプロセスは、生産者にとっては困難なものであった。

この期間の製品の情報をRFID(radio frequency identifier)を活用しモニタリングするのがサトーのRFID温度ログ管理ソリューション「LogBiz - Thermo」だ。独自のUHFとNFCのデュアルタグに温度センサーと情報を記録できるRFIDラベルを製品に貼り付け、スマートフォンで読み取ることで情報を収集、クラウドに情報を集約することで、製品の温度環境情報を見える化する。

今回、東京ビッグサイトで10月6日から8日まで開催された「第23回自動認識総合展」においてサトーは、同製品を展示。実際のRFIDタグや設置例などを公開している。「LogBiz - Thermo」とはどのようなものかレポートする。

  • 「第23回自動認識総合展」 サトーブースより

    「第23回自動認識総合展」 サトーブースより

サトーは、1940年竹材加工機の製造から創業し、1962年にハンドラベラーの製造販売に着手して以来、プリンタ、ソフトウェア、シール・ラベル、ハンドラベラー等の自動認識ソリューションにおいて世界でも高いシェアを持つ知る人ぞ知る企業だ。「第23回自動認識総合展」においては、"RFID,Ready!"をキャッチフレーズにRFIDを中心とした様々なソリューションの展示を行っていた。

「LogBiz - Thermo」(公式Webサイト)

「LogBiz - Thermo」(公式Webサイト)

「LogBiz - Thermo」は、温度ロガー機能搭載のRFIDタグを使った物流ソリューション。使用されるRFIDタグは、遠距離読み取り用のUHFとスマートフォンで読み取れるNFCの二つのチップを内蔵したデュアルタグに加えて、温度センサーと温度を記録できるチップを搭載。1mmの厚さのマンガン電池を採用した「超薄型バッテリー」と組合わせてラベル形状で提供される。このラベルを被着体に手軽に貼り付けることで、対象の温度、位置情報をクラウドで一元管理できるサービスとなっている。

  • 「LogBiz - Thermo」用の温度ロガー機能付きRFIDタグ。ラベル状の薄型バッテリーにより設定条件次第で1年間動作可能(18時間間隔の場合)

    「LogBiz - Thermo」用の温度ロガー機能付きRFIDタグ。ラベル状の薄型バッテリーにより設定条件次第で1年間動作可能(18時間間隔の場合)

RFIDタグは、設定の内容で変わってくるが最大駆動期間は1年(18時間間隔の場合)。データの保存は記録間隔を15分に設定した場合、最大4864レコードの記録を行うことができ、タグは使い切りタイプでメンテナンスは要らない。管理する製品にRFIDタグを貼り付けるとタグは自動的に設定に従い温度を記録していく。あとはメーカーの製造部門や輸送担当者、配送センターの担当者、小売店の担当者等がスマートフォンでラベルをスキャンすることで、タグの温度情報とスキャンした時の位置情報をクラウドにアップロード、関係者が製品の温度情報と位置情報を共有、見える化できる。

  • スキャンされた情報は位置情報と共にクラウドに送信され、Webで情報を共有できる

    スキャンされた情報は位置情報と共にクラウドに送信され、Webで情報を共有できる

  • 収集されたタグデータにはメモを記載できる

    収集されたタグデータにはメモを記載できる

  • クラウドに収集されたデータをレポートとして出力可能。日本語、英語、中国語に対応

    クラウドに収集されたデータをレポートとして出力可能。日本語、英語、中国語に対応

同製品の開発スタッフによれば、サービスについて「現在は、一般の人が普通に使えるスマートフォンという便利なデバイスが普及しているのでこれを使わない手はない」とコメント。スマートフォンが使えるということはネットワークにつながるということ。運用に関してはどこででも利用できるデバイスを活用できる汎用性の高いプラットフォームとなっている。

そして、「LogBiz - Thermo」のもう1つ注目すべき点が国際運送への対応だ。特に空輸を使う場合、リチウムイオン電池を使ったバッテリーやRFIDなどの電波を発するものに対する扱いは注意が必要で、今回マンガン電池を採用することでこの問題をクリアしている。開発スタッフによれば、今までにないシステムなので、経済産業省、農林水産省、税関他、国の機関と調整を繰り返し、ようやく実現に漕ぎつけている。

  • 温度管理の対象がボックスの中の場合、延長用のエクステンダーアンテナを貼り付けることで問題なく使用できる

    温度管理の対象がボックスの中の場合、延長用のエクステンダーアンテナを貼り付けることで問題なく使用できる

  • イチゴを出荷した場合のサンプル。手前のラベル部分にタグが貼り付けられている

    イチゴを出荷した場合のサンプル。手前のラベル部分にタグが貼り付けられている

同社の技術は、沖縄セルラーが栽培・販売する沖縄のブランド苺「美ら島ベリー」の輸送の全過程において活用され品質の保証とブランド維持に貢献している。また、1800年代に創業した日本酒ブランドにおいても出荷、流通、納品、消費者までの緻密な定温管理から偽造防止。農業分野においては水田の水温管理などにも活用されている。同社ではこの技術を活用し、高温度にも対応したICチップを開発して、工業プラントや製造部門、サーバールームなどの厳しい環境での温度管理や製品管理などで活用するプランや、流通部門での入庫・出庫管理、ロケーション管理などや資材の返却管理から紛失防止などの資産管理部門での運用など、様々な分野での応用を視野に開発に力をいれていく予定だ。

展示会では9月にリリースした電池レスの超小型Bluetoothタグ「Wiliot IoT ピクセル(以下略、Wiliotタグ)」も参考出展していた。同製品はイスラエルに本社を置くWiliot社が開発したIoTセンシング・ラベルで、同社と協業しリテール分野におけるIoT化に関する契約を締結している。Wiliotタグは周囲の電波を吸収し発電するバッテリーレスが特長でBluetoothと併せて様々な分野での活用が期待されている。同社では、本年中にWiliotタグを用いた小売店舗内でのリアルタイム在庫管理の実証実験を行い、来年から商用化、実店舗での運用を開始する予定だという。