リコージャパンとリコーグループのメイクリープスは9月29日、トレードエコシステム事業において提供するクラウド型請求管理サービス「MakeLeaps」、クラウド型AI帳票認識OCRソリューション「RICOH Cloud OCR」、企業間取引デジタル化ソリューション「RICOH Trade Automation」の3製品について、2022年1月に改正される電帳法に対応した新機能を順次提供開始すると発表し、記者向けの説明会を開催した。
電子帳簿保存法に対するリコーの取り組み
これまでの企業間取引における資料は紙での送受信が大半を占めアナログ作業が多かったため、ITを活用した効率化の余地が多い領域である。また、新型コロナウイルスの感染拡大後でも書類の発送や管理業務のために危険を冒して出社する必要があった。こうした課題を解決するために同社は、請求書の発行や受け取りを中心とした経理業務を電子化することで、効率よく働ける環境の提供を目指したという。
クラウド型請求書管理サービス「MakeLeaps」は見積書や請求書などの帳票および伝票を作成できる管理ソフトである。オフィスに出社せずとも請求書をメール送付できるだけでなく、取引先に応じて印刷や郵送代行まで対応する。入金管理機能も備えているため、入金消込の負荷軽減にもつながるとのことだ。電子帳簿保存法の改正に伴い変更される要件に対応して、書類の保存と検索に関する機能を強化する予定だ。
クラウド型AI帳票認識OCRソリューション「RICOH Cloud OCR」は、受け取った請求書の仕訳と支払いに特化したクラウド型のAI-OCRである。請求書を同社の複合機でスキャンすることで、仕訳作業などに必要な情報を自動で取り込むため、転記にかかる時間が不要になる。今回の電子帳簿保存法の改正に伴って、請求書や納品書の保存と検索に関する機能を強化する。
企業間取引デジタル化ソリューション「RICOH Trade Automation」は、MakeLeapsと連携して、購入企業側の発注書や受領請求処理業務と、企業間のワークフローをデジタル化する。仕入先との注文書および請求書のやり取りを電子化してバックオフィス業務の効率化をすることで、在宅勤務などリモート環境での業務においても紙に縛られない柔軟な働き方を提供するとのことだ。
同社は今回の3製品の機能強化に加えて、複合機を使った紙文書のスキャニングソリューションや、紙帳票および電子データの維持・管理・検索をサポートするドキュメントマネージメントサービスなど、市場のニーズと法制度に適応したサービスを拡充する。
記者発表会の中で同社の ICT事業本部 トレードエコシステム企画室 室長の児玉哲氏は、「紙資料と電子資料が混在することは違法ではないが、税務調査の際に紙と電子を区別して速やかに提示できない場合は保存義務違反となる。紙でのやりとりがある場合は電子保存に一本化し、効率化を図ってはどうか」とコメントした。
令和4年1月施行、電子帳簿保存法のポイント
電子帳簿保存法は1998年に制定され、これまでに何度か改正されている。書類を電子保存するために必要な要件や事前申請のハードルが高いことに加えて、初期投資にかかる費用が高額であることから、電子保存に取り組む企業は一部のみにとどまっていた。しかしこの度、令和4年1月の改正に伴って大幅に内容が見直される運びとなった。
紙で発行された書類の電子化に関しては規制要件が緩和されるため電子化しやすくなっているのだという。一方で、電子取引データは原則として電子保存が義務付けられ、電子メールやWebを介して入手した請求書はプリントアウトしての保存ができなくなる。電子取引後に紙で出力し保存できるという措置が廃止され、電子帳簿保存法の要件を満たした電子保存でなければ法令違反となるとのことだ。
従来は資料の可視性要件が書類によってさまざまだったが、法改正によって検索項目が取引年月日、取引金額、取引先に限定される。さらに、税務職員によるダウンロードの求めに応じることができる場合は、日付や金額での範囲検索や2つ以上の任意項目での組み合わせ検索機能が不要となるため、二重入力にかかる手間や時間の削減が可能になるのだという。
紙で資料を受け取って電子データで保存するというスキャナ保存要件に関しては、税務署への事前申告が不要となる。これまでは不正防止のために社内規則の整備などを定めた適正事務処理要件を満たす必要があったが、これが廃止される予定だ。申請の煩わしさや管理体制構築の難しさが解消されるため電子化に取り組みやすくなる。
同会見の中で同社のICT事業本部 トレードエコシステム企画室 RICOH Cloud OCR プロダクトオーナー 田村りつ子氏は「電子データで送受信する書類は原則として電子データでの保存が義務付けられるようになる。これまでのように紙で出力して保存することが許されなくなるため、電子データをどのように保存するのかを各企業で検討しておく必要がある」と述べた。