東京医科歯科大学(医科歯科大)は9月7日、2021年8月中旬に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者から検出したデルタ株から、アルファ株主要変異(N501Y)の類似変異である「N501S変異」を有する新たなデルタ株の市中感染事例を確認したが、同変異を有するデルタ株が国内で新たに変異を獲得した可能性が高いこと、ならびに同株の患者と接触歴のあるワクチン接種済みの人物からブレイクスルー感染伝播事例を確認したことを発表した。
同成果は、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科ウイルス制御学分野の武内寛明 准教授・医学部附属病院病院長補佐、難治疾患研究所ゲノム解析室の谷本幸介 助教、リサーチコアセンターの田中ゆきえ 助教、ウイルス制御学分野の北村春樹 大学院生および多賀佳 大学院生らによる医科歯科大の入院患者由来SARS-CoV-2全ゲノム解析プロジェクトチームによるもの。
それによると、N501S変異を有する新たなデルタ株と市中流行株である従来のデルタ株との特徴を比較したところ、ワクチン1回接種または2回接種後2週間以上経過された人への感染伝播が判明したという。
このことについてプロジェクトチームでは、N501S変異を有する新たなデルタ株は、少なくとも市中流行デルタ株(B.1.617.2 系統)と同等の感染伝播能力を保持していることが考えられるとしている。
ただし、現時点においてはさらなる性状解析および疫学調査が必要としており、引き続き強固な感染予防対策を継続すると同時に市中感染株の推移をモニタリングし、ウイルス流行の実態を把握することが公衆衛生上の意思決定に重要であると考えられるともしている。