東京大学(東大)は8月26日、腸管における胆汁酸の再吸収を阻害することが高コレステロール血症予防につながることを踏まえ、再吸収を行うトランスポーターの吸収特性を明らかにし、それを阻害するポリフェノールとして、紅茶に含まれる「テアフラビン」を見出したと発表した。

同成果は、東大大学院 農学生命科学研究科 食の健康科学(ニップン)寄付講座の髙島優季大学院生、小林彰子特任准教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する学術誌「Journal of Agricultural and Food Chemistry」に掲載された。

胆汁酸は肝臓でコレステロールから合成されて腸管に分泌された後、小腸下部に発現するトランスポーター「Apical sodium-dependent bile acid transporter(ASBT)」により再吸収され、肝臓で再利用されることが分かっている。腸管における胆汁酸の再吸収機構を阻害することは、コレステロールの消費を促進させ、血中コレステロール濃度を低下させることにつながることから、腸管ASBTは高コレステロール血症予防・治療のターゲットとして注目されているという。

  • 紅茶ポリフェノール

    (左)ASBTの役割と胆汁酸の腸肝循環の模式図。(右)ASBTおよび阻害活性が示された紅茶テアフラビンの構造 (出所:東大Webサイト)

そこで研究チームは今回、食品成分による血中コレステロール濃度の低下を目指し、腸管における胆汁酸の再吸収を阻害するポリフェノールの探索とそのメカニズムの解明を目的とした研究を実施。小腸上皮のモデル細胞を用いたスクリーニングにより、紅茶に含まれるポリフェノールの一種である「テアフラビン」の仲間である「TF2A」および「TF2B」が高い活性を示すことが見出され、ASBTを強制的に発現させた細胞においても阻害活性を示すことが確認されたという。

また、これらのテアフラビンがASBTに対し、基質と同じ部位に結合する競合阻害である可能性が示されたことから、さらなる調査を行ったところ、テアフラビンは、中性緩衝液内で酸化構造を取り、速やかにASBTの基質結合部位に作用し、胆汁酸取り込みを阻害する機構が考えられるという結果を得たとする。

  • 紅茶ポリフェノール

    。EGCgの酸化構造とCys残基におけるチオール基との結合様式(Lambert et al., 2008)。タンパク質Cys残基のモデルとして、N-acetylcysteineが用いられている (出所:東大Webサイト)

ポリフェノールは、腸管吸収性が低い食品成分で、特に、テアフラビンやカカオのプロシアニジンなどの重合ポリフェノールは、腸管からほとんど吸収されないことが知られている一方で、生体においてはさまざまな生理機能が報告されている。今回の研究で行われた細胞を用いた検討でも、TF2AおよびTF2Bの腸管吸収量は測定可能な下限値未満だったという。

研究チームでは、今回の研究成果について、腸管上皮でのテアフラビンの作用は、吸収されずとも生理活性を有するポリフェノールの重要なメカニズムの1つであると同時に、食品に含まれるポリフェノールを日常的に摂取する意義を、改めて示すことができたとしている。