米NICEの日本法人であるナイスジャパンは7月27日、同社が実施したカスタマーサポート業務における、CX(カスタマーエクスペリエンス)に関する意識調査の結果を公表した。同調査は2021年4月から5月に国内で実施されたもので、コンタクトセンターやカスタマーセンターを管理または運用する部署に勤める250名と、過去6カ月以内にカスタマーセンターやコールセンターに問い合わせたことがある消費者250名が回答した。

  • カスタマーエクスペリエンスに関する調査結果の概要 資料:ナイスジャパン

同調査の結果によると、問い合わせ業務について、顧客とのやり取りを「スムーズに対応できている」または「やや対応できている」と自己評価した企業は72.8%に上るという。しかし問い合わせ手段の使いやすさや対応のスムーズさについて、「とても満足している」または「やや満足している」と回答した消費者は66.0%にとどまっている。

さらに、消費者が「あまり満足していない」または「まったく満足していないと」答えた割合は14.8%である一方、問い合わせに対して「あまり対応できていない」「まったく対応できていない」と答えた企業は5.6%と、約3倍のギャップがあったとのことだ。

問い合わせ満足度に関する企業と消費者のギャップについて、同社は「企業が今後取り組むべき事柄がまだ多く、消費者の不満を解消するためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)が重要」と分析している。一般的には若年層が対象だと考えられがちなDXであるが、40代から50代のミドル層においてもデジタル窓口からファーストコンタクトが始まっていることなどから、Webサイトの拡充といった対策が重要であるとのことだ。

  • 消費者は企業の問い合わせ対応を評価しておらず、「満足していない」との回答は企業の自己評価の約3倍に上る 資料:ナイスジャパン

また、消費者が企業に対して問い合わせを行う際に、78%がWebサイトのQ&Aページを確認していることが明らかになった。次いで、Webサイトの問い合わせフォーム(72.8%)、オペレータへの電話(67.2%)が多い結果となった。

一方で、企業が問い合わせ対応のために用意している手段として、最も多い67.6%の企業がメールと回答した。次いで、問い合わせフォーム(63.6%)、WebサイトのQ&Aページ(60.4%)と回答している。同社はこれらの結果から、企業が考えている「Web問い合わせフォーム」および「電話/オペレータ」では、消費者が求める問い合わせチャネルに応えきれていない可能性を指摘している。

問い合わせのチャネル別に満足度を調査した結果からは、問い合わせフォームとWebサイトのQ&Aページは、企業の自己評価よりも消費者からの評価が低いことが明らかになっている。「電話/オペレータ」および「店頭・実店舗」については、企業の自己評価よりも消費者の満足度が高かったとのことだ。

  • 企業の自己評価と消費者の評価の間にはギャップが見られた 資料:ナイスジャパン

こうした結果より同社は、消費者は電話窓口には概ね満足していながらも、問い合わせフォームからの返事が遅い点や、Q&AのWebページが不十分な点が消費者の満足度低下の要因になっていると分析し、Webページの的確なアップデートを随時行っていく必要があると結論付けた。

  • 消費者が求める問い合わせチャネルを企業が提供できていない可能性が示唆される 資料:ナイスジャパン

問い合わせ対応に従事するオペレータの作業負担に関しては、58.0%の企業が「とても高い」または「やや高い」と回答した。オペレータの負担が高い理由としては、オペレータの人数不足や、知識またはスキルの不足に起因しているとする回答が上位である。

この結果について同社は、問い合わせ対応を行うオペレータはWebサイトのQ&Aページを見ながら回答することもあるとして、わかりやすいデザインで導線を確保する必要があるとの考えだ。Q&Aページの充足化は、消費者だけでなくオペレータの負担軽減のためにも取り組むべきとしている。

  • 問い合わせ対応によるオペレータの負担が高いと回答した企業のうち、多くの企業がオペレータのリソース/スキルの問題をその要因として挙げた 資料:ナイスジャパン

こうした課題を受けて同社は、9月にクラウドCXプラットフォーム「CXone」を国内市場で提供開始する。同サービスはコンタクトセンターに必要なオムニチャネルのルーティング、ナレッジマネジメント、ワークフォースの最適化、顧客分析などの機能をクラウド上で可能にするプラットフォームである。クラウド上で管理ツールを利用できるため、在宅勤務中のオペレーターに対してスキルの付け替えや通話のモニタリング、コーチングが行える利点を持つ。

販売の開始に先立って行われた記者会見において、同社の日本法人社長 安藤竜一氏は「DXはコスト削減のための目的であってはならないと考えている。企業も利用者も豊かになるための手段としてDXを活用するべきであり、そうした点でCXoneは現在の日本市場に必要なサービスと自負している。日本市場のDXを活性化するためにも、ナイスジャパンはCXoneと共に成長していく」と述べた。

  • ナイスジャパン 日本法人社長  安藤竜一氏