未だコロナ禍の影響を大きく受ける飲食業界では、検温や消毒、密にならないための座席数の削減や定期的な換気など、都道府県の定める方針に準じながら多くの感染症対策が必要となっています。そこで今回は、コロナ対策の一環としてオーダー業務をデジタル化された、Tune upが経営する横浜西口の“CRAFT KITCHEN Mid.Ru 横浜西口店”の事例を紹介します。
店舗のコロナ対策として非接触のスマホオーダーを導入
「2020年4月に初めて緊急事態宣言が出た時はさすがに不安でした」と話すのは同社代表取締役の岩城氏。お店は6月中旬まで休業し、消毒や検温など基本的なコロナ対策はもちろん、注文時の不必要な接触を避けるため、QRコードを利用したシステムを使い、オーダー業務をデジタル化した。
オーダー業務=利用者との接点、が減る事への不安
ただシステム導入に際し、社内では反対の声もあったという。同社はリピーター客が多いので、これまでの口頭での注文に慣れている利用者が変化を面倒に感じてしまうのではないか、またシステム導入によってお店全体が冷たい印象になってしまうのではないか?など、接客に力を入れているスタッフほど反対の声が大きかったという。
しかしその心配とは裏腹に、導入後の利用者の反応は驚くほどポジティブだったという。オーダー業務をデジタル化した一番の理由は店舗のコロナ対策である事をしっかり伝えると、むしろ安心して食事を楽しめるお店だと好印象を抱いてくれたという。実際、システムを導入したとはいえ強制ではなく、これまで通りホールスタッフに口頭で注文する事も可能だと伝えていたにも関わらず、システムの利用率は多い日で95%以上、つまりほとんどの方がスマホから注文をされている。
「店舗規模によって異なりますが、例えば65席の“CRAFT KITCHEN Mid.Ru 横浜西口店”では、1カ月に約2500回のスマホからの注文があります」と岩城氏。
続けて、利用率の高さの所以のもう1つの側面として、スマホでの注文が圧倒的に利便性が高いからだという。
「利用者の側からすると、呼んでもなかなかスタッフが来ない状況が続くと、その飲食店での体験価値はかなりマイナスになると思うのです。自分自身、外食時にスタッフ待ちの時間が長いと注文を諦めてしまう場合もある。ただ、お店の立場からすると混雑時はどうしてもお待たせしてしまう場合がある」と岩城氏。こうしたギャップを、デジタルを上手く活用して埋めることができた。
本来やるべき接客に集中できる余裕が生まれた
さらに、利用者からの呼び出し回数が減った事でホールスタッフに余裕が生まれ、ドリンクの提供スピードが早くなり、手間はかかるけど単価の高い飲み比べセットなどの新メニューも導入する事ができ、結果的に昨年同月比で客単価がアップした。
「注文を取るという行為自体は重要ではなく、能動的な行動をする事が本来の接客だと思っています。そのためにはホールスタッフに余裕が必要で、システムがその余裕を生み出してくれました。コロナの影響でこまめな消毒や換気など、これまで必要のなかった業務負担は増えましたが、今回のように店舗とお客様双方にメリットのあるデジタル化があれば、今後も積極的に取り入れていきたいと思っています」(岩城氏)