東京農工大学(農工大)は7月15日、実験室における培養細胞を用いた実験において、納豆の抽出液に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染を阻害する効果があることを確認したと発表した。

同成果は、同大 農学部附属感染症未来疫学研究センターの大場真己 特任准教授、同 文榕鐸 博士課程1年、同 横田智子 技能補佐員、同 安岡潤子 客員教授、同 佐藤葉子 特任専門職員、同 和気仁志 客員教授、同 二歩裕 特任講師、同センターセンター長の水谷哲也 教授、、同大 農学部共同獣医学科の西藤公司 教授、宮崎大学農学部獣医学科の齊藤暁 准教授、宮崎大学産業動物防疫リサーチセンターの岡林環樹 教授らによるもの。詳細は国際学術誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」にオンライン掲載された。

今回の抽出液は、10gの市販品に対し遠心分離を行った後、室温で撹拌した後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を添加。さらに混合させた後に遠心分離を実施し、上澄みをろ過して得たほか、使用までは-30℃に保ち、実際の実験時は100℃で10分間の加熱した場合と、しない場合に分けて実施。その結果、納豆抽出液に含まれる物質がSARS-CoV-2 の表面に出ているスパイクタンパク質の受容体結合領域を分解することで、感染を阻害することを証明したとする。

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    今回の研究で行われた納豆抽出液の調整方法の概要 (出所:農工大Webサイト)

また、試験管内の実験においても従来株ならびにアルファ株(N501Y)のスパイクタンパク質の受容体結合領域も分解されることを確認。さらに、牛ヘルペスウイルスI型のウイルスの表面糖タンパク質を分解し、培養細胞への感染を阻害することも確認したという。

納豆が健康に有益であるということは以前から語られてきたが、抗ウイルス性としては、環状リポペプチド抗生物質であるサーファクチンを除いて十分に研究が進められてきていないという。今回の研究で用いられた抽出液が熱処理でウイルスのタンパク質を分解できなくなることやタンパク質分解酵素の阻害剤を用いた実験などから、少なくともタンパク質分解酵素の1つであるセリンプロテアーゼが含まれていることが考えられるとしている。

なお、研究チームでは、今回の研究はあくまで培養細胞を用いたものであり、納豆を食べることで実際に新型コロナウイルスの感染を防ぐことができることを示したものではないことに注意が必要だと説明する一方で、これまで食品の直接的抗ウイルス効果を示された例は少なく、伝統的な食品の非常時における価値が見直されるきっかけになる研究となるとも説明している。